カテーテル(冠動脈・弁・心筋)

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心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査とはエックス線透視下に末梢血管から心臓や大血管へカテーテルをすすめて、各部位の造影、内圧記録などを行い、心臓大血管疾患の診断や治療を行うものを言います。

心臓カテーテル検査とカテーテル治療は附属病院1階のIVRセンターで行います。
通常は2泊3日の入院で行いますが、病状によっては入院日数が長くなる場合があります。

対象となる疾患と行う検査は以下の通りです。
  右心カテーテル検査 冠動脈造影 左室造影 大動脈造影 心筋生検
狭心症・心筋梗塞 change_history radio_button_checked radio_button_unchecked close close
弁膜症 radio_button_unchecked radio_button_unchecked radio_button_unchecked change_history close
心筋症 radio_button_unchecked radio_button_unchecked radio_button_checked close radio_button_unchecked
肺高血圧 radio_button_checked change_history change_history close close

radio_button_checked必須 radio_button_uncheckedほぼ行う change_history必要に応じて行う close行わない

狭心症や心筋梗塞に対する心臓カテーテル検査と治療

冠動脈造影と経皮的冠インターベンション(PCI)

ほとんどは橈骨動脈(手首の動脈)から局所麻酔下に検査を行います。橈骨動脈で行えない場合は、大腿動脈(足の付け根)もしくは上腕動脈(肘)から行います。 カテーテルによって冠動脈に造影剤を注入し、狭窄の有無を診断します。狭窄が見つかれば以下の3つの治療のいずれかを選択します。

1. 内服治療(保存的治療)
2. 経皮的冠インターベンション(PCI)
3. 外科治療:冠動脈バイパス術(CABG)

1. 内服治療(保存的治療)

(ア)狭窄があっても軽度な場合、もしくは中等度狭窄(>75%)であっても、症状がないか、他の検査で虚血がないと診断した場合は内服治療を中心とした保存的治療のみで経過観察します。

(イ)内服治療には、血をサラサラにする薬(抗血小板薬)、動脈硬化の進展予防のための薬(脂質異常症や高血圧、糖尿病に対する治療)などが含まれます。

2. 経皮的冠インターベンション(PCI)

(ア)狭窄が高度(>90%)な場合、中等度(>75%)で自覚症状がある場合もしくは他の検査で虚血があると診断された場合には、経皮的冠インターベンションを行います。

(イ)虚血の診断は、負荷心筋シンチグラフィーまたは冠血流予備量比(Fractional flow reserve: FFR)で行います。

(ウ)PCIは主に橈骨動脈アプローチで行います。

(エ)血管内イメージング(血管内超音波IVUS, 光干渉断層法OCT)を用いた、正確な治療を心がけています。

当院での平成29年の心臓カテーテル検査の総数は1,532件、冠動脈インターベンション(PCI)数は500件でした。

3. 外科治療:冠動脈バイパス術(CABG)

(ア)重症3枝病変や左主幹部病変の一部では、PCIよりもCABGが良いと判断した場合は外科治療をおすすめしています。

(イ)外科治療の方針は心臓血管外科とのハートチームカンファレンスで決定します。

当院における経皮的冠インターベンション(PCI)の実績

経皮的冠インターベンション(PCI)件数

経皮的冠インターベンション(PCI)の件数グラフ

急性冠症候群(ACS)症例に対するPCIも年々増加し、平成29年は188件でした。
緊急PCI例のうち、急性心筋梗塞は125件、不安定狭心症が70件でした。

急性冠症候群(ACS)に対する緊急インターベンション数

急性冠症候群(ACS)に対する緊急インターベンション数グラフ

当院の特徴

1. 血管内イメージングの豊富な経験

血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)を駆使したきめの細かい治療が特徴です。

血管内超音波(IVUS)と光干渉断層法(OCT)

2. ロータブレーター(rotational atherectomy)

ロータブレーター(rotational atherectomy)

当院はロータブレーターの施設基準を取得しています。高度石灰化病変に対して、ロータブレーター(先端にダイアモンドをちりばめたドリル)を用いて治療を行っています。

3. エキシマーレーザー(ELCA)

エキシマーレーザー(ELCA)

多量の血栓性病変に対して、エキシマーレーザーを用いた治療が可能です。

4. 方向性粥腫切除術(DCA)

左前下行枝の近位部など、ステント治療に適さない病変は、方向性粥腫切除術(DCA)を行っています。

弁膜症に対する心臓カテーテル検査と治療

弁膜症の診断は心エコー図で行いますので、カテーテル検査は術前検査としてもしくはカテーテル治療目的で行います。以下の疾患が対象になります。

僧帽弁狭窄症

リウマチ性僧帽弁狭窄症に対する経静脈経カテーテル的僧帽弁交連裂開術(PTMC) を行っています。
適応は自覚症状のある中等症以上のリウマチ性僧帽弁狭窄症で、形態がPTMCにむいている場合です。
左心房内に血栓がある、重症僧帽弁逆流を合併している場合には行うことはできません。

僧帽弁狭窄症

大動脈弁狭窄症

1. バルーン大動脈弁拡張術(BAVまたはPTAV)

外科的大動脈弁置換術(AVR)、もしくは経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が不可能な例に対する治療、またはAVRやTAVIまでのブリッジとして行っています。

2. 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)

2018年4月からAVR不可能例や施行困難例に対してTAVIを開始しました。

TAVIの適応

自覚症状(心不全、胸痛、失神)のある重症大動脈弁狭窄症で以下のような方。
・外科的大動脈弁置換術が不可能
・外科的大動脈弁置換術のリスクが高い患者さん
たとえば、過去に冠動脈バイパス手術を受けている、高齢である(おおむね80歳以上)
虚弱である、肝硬変、重症肺疾患など開心術のリスクが高い患者さんなど。
詳しくはこちらもご参照ください。
以下のような患者さんには(今のところ)TAVIはできません。
・余命1年未満
・透析患者(保険適応外)
・感染性心内膜炎
・外科的大動脈弁置換術のリスクは低いが、本人がTAVIを希望する場合
・重度の認知症

TAVIの手順

TAVIには大腿動脈からカテーテルを挿入して行う、大腿アプローチと、心尖部からカテーテルを挿入する心尖部アプローチがあります。

経大腿アプローチによるTAVIの手順

1. 大腿動脈から大動脈内を逆行性にカテーテルを進め、ガイドワイヤーを大動脈弁から左心室に通過させる
2. バルーンを拡張させて人工弁を留置する
3. バルーンを抜去するとすぐに人工弁が機能します
僧帽弁狭窄症

TAVIで用いる人工弁(Sapien3)と留置後の状態

僧帽弁狭窄症

心筋症に対するカテーテル検査と治療

心筋症に対しては、冠動脈疾患の有無を確認するために冠動脈造影検査を行います。また、治療可能な二次性心筋症の診断を行うため、心筋生検を行っています。カテーテル治療は肥大型閉塞性心筋症(HOCM)に対して、経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)を行っています。

参考資料
1. 大倉宏之編著:チャートでわかる実践IVUS,OCT & FFR(南江堂/2009年)
2. 大倉宏之、吉田清編著:
 SHDインターベンション治療のための心エコー図マニュアル(メジカルビュー社/2014年)
3. 吉田清、木村和美、大倉宏之編:
 心エコー・神経超音波で診る脳梗塞診断マニュアル(南江堂/2013年)