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究極の直腸癌手術
【直腸癌手術の歴史】
過去長い年月にわたり、直腸癌の手術は永久的な人工肛門をつくる「直腸切断術」という手術が行われてきました。その後、20〜30年前のことですが、手で縫わなくても吻合(切離した管腔臓器をつなぎ合わせる)することのできる手術器械が開発され、直腸癌の手術が一歩前進することになります。手で縫うことが困難な直腸下部の吻合で器械が使われるようになり、直腸下部でも腸管を吻合して肛門を温存することのできる術式が広く行われるようになったのです。「低位前方切除術」と呼ばれます。それ以降、低位前方切除術という肛門温存術式が広く行われ、直腸癌イコール人工肛門という手術は過去のものになりました。
しかしながら肛門に極めて近い部位(3cm〜5cm以内)に位置する超低位の直腸癌に対しては、現在でも一部の専門施設でしか肛門温存手術は行われておりません。そのような状況において当科では2005年4月から、究極の肛門温存手術である内肛門括約筋切除を伴う超低位直腸切除術(intersphincteric resection,以下ISR)を導入しました。
【究極の肛門温存手術 ISR】
肛門に近い部位に位置する超低位の直腸癌に対して、永久的人工肛門をつくらず、自然肛門を温存する術式です。直腸癌の進行度や部位に応じて、内肛門括約筋を全部又は部分的に切除することで、癌に対する安全距離を確保し、癌を根治的に切除します。
この術式を行うことで、ほとんどの方で永久的人工肛門を回避でき、自然排便が温存されるようになりました。ただし、吻合部分は肛門の皮膚に限りなく近くなるため、従来の低位前方切除や超低位前方切除術後よりもさらに、排便機能の障害が強く出ることがあり、術後には排便訓練がどうしても必要となります。従って、全ての方にお勧めできる手術ではありません。年齢、職業、生活スタイル、肛門機能を総合的に評価して、最適な手術術式を一緒に選んでいます。
【骨盤外科手術】
直腸、前立腺、膀胱、卵巣、子宮、骨・軟部組織などの骨盤内臓器に由来する癌は、通常は消化器外科、泌尿器科、婦人科、整形外科がそれぞれ単独で診療しています。しかしこれらの骨盤内臓器は隣接し、互いに密接に関係しておりますので、進行癌、再発癌では、複数の臓器に浸潤していることが多くなります。癌を根治させるには複数の臓器の合併切除を余儀なくされ、技術的に高度な骨盤内臓全摘術が必要になることも多くあります。
【究極の高度直腸癌手術】
ISRが究極の肛門温存手術なら、各科が連携して行う骨盤内臓全摘術は究極の高度直腸癌手術であると思われます。消化器外科、泌尿器科、婦人科、整形外科には、それぞれの分野のプロフェショナルな医師が待機しておりますが、単独の診療科では治療に限界をきたすこともあります。しかし、これらのプロフェショナルな医師が一致協力して手術を行いますと、従来では到底救えなかった進行・再発癌でさえも救える場合が数多くあります。
当科では、泌尿器科・婦人科・整形外科と連携協力し、骨盤内臓器に発生した進行・再発癌の手術治療を積極的に行っております。