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機能を温存した胃手術
【機能を温存する胃手術とは?】
「胃に癌ができたから、切って悪いところを取りましょう。」
胃の手術(胃癌の手術)に対して多くの方が持っておられるイメージは、このようなものではないでしょうか。従来の手術はまさにこの通りで、憂いなく取り去ることがすべてでした。本質的には決して間違ってはいなかったのですが、人の体の構造・機能がどんどん解明され、そしてたくさんの患者さんの手術症例が全世界的に蓄積されることによって、これまでは常識と考えられてきた手術方法に改良が加えられるようになってきました。癌治療の効果を損なわずに ”胃の機能を温存する”ことが、その改良点です。
【機能温存胃手術の種類】
胃の手術後は食物の消化吸収に関連するような事で悩まれる方が多いため、そのような弊害をなんとか未然に防げないかが焦点となってきました。そのために検討されてきた手術の改良としては大ざっぱに2通りあります。
(1) 本来の胃は入口(噴門)と出口(幽門)に食物逆流の防止機能を持っている。  その機能を保つために、噴門と幽門を切除しないでおこう。
(2) 胃腸の動きに対する神経の働きには不明な点が多く、あまり重要視されていなかった。 しかし考えを訂正する必要のある研究結果が報告されており、これまでは切離していた神経を切離しないでおこう。
これらの改良点は完全に独立した術式を生み出しているわけではなく、(1)だけの手術や(2)だけの手術、あるいは両方を組み合わせた手術などが各患者さんの病態(病気の場所や進行度)に応じて選択されます。
【当科での取り組み】
当科では教室開設当初より胃癌に対する機能温存手術に積極的に取り組んできました。胃切除術後には様々な後遺症を背負うことになりますが、その代表的なものとして逆流性食道炎(腸液が食道のほうへ逆流することによる食道の炎症)やダンピング症候群(食事が急に腸に流れ込むことで起きる不愉快な症状)などがあります。本来、胃の出口には食事の通過を調節し、腸液の逆流を防止する幽門輪が存在しています。この幽門輪を温存することで先ほどの後遺症を軽減することを目的とした手術のことを幽門保存胃切除術といいます。具体的には胃の周囲のリンパ節転移の少ない早期胃癌を対象にこのような手術をおこなっています。また最近は腹腔鏡下手術技術の進歩により開腹術だけでなく腹腔鏡下に幽門保存胃切除術を行うことも可能となり、術直後の体への負担と後遺症を同時に軽減することに役立っています。
また、胃の入り口付近にできた胃癌の場合、その進行度に応じて2通りの機能温存手術を施行しています。早期癌の場合には胃の下半分を温存して切除し、間に小腸を間置する噴門側切除術を行うことができます。また進行癌の場合には幽門輪を温存して胃をほぼ全摘出し、代わりに小腸を間置する幽門保存胃亜全摘術が適応となります。
従来の胃切除術では腹腔内の臓器の働きを調節するとされる迷走神経を切断されてきました。しかし最近では迷走神経を温存する技術が可能となり、上記のような機能温存手術とあわせて施行することで、胆石の発症や下痢、体重減少などの後遺症を少しでも軽減することに努めています。
【ご相談ください】
「胃に癌ができたから、切って悪いところを取りましょう。」
本質的には癌を憂いなく取りさることが大前提です。
そのため機能温存手術は誰にでも行えるわけではなく条件を満たす場合にのみ行えるのですが、私達は歴史的にも機能温存胃手術を積極的に行っておりますので是非来院していただき、私達にご相談ください。当科では木曜日に胃専門外来を行っております。