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研究テーマ一覧

1)肝硬変の病態と治療
腹水の病態生理について循環動態、肝機能、腎機能、内分泌機能などから解析し、難治性腹水、肝腎症候群に関連して腹腔内の局所因子の関与にも注目しています。また実験的にはアドレノメデユリン、エンドセリンの全身循環動態、門脈圧亢進症に及ぼす影響を検討し、アルブミン合成の制御機構に関する基礎的検討も開始しています。さらに、当科より総合医療学教室に出向している松村雅彦講師とともに門脈血行動態を基礎にした食道・胃静脈瘤の理想的な内視鏡的治療の確立に努めており、静脈瘤治療の分野において高い評価を得ています。


2)難治性腹水・特発性細菌性腹膜炎の病態解析
肝硬変患者の腹水が難治化する機序について腹水中の血管透過性因子に着目し、その基礎的検討を行っています。また、難治性腹水の臨床像を解析し、治療法選択の標準化を行うためのクリティカルパスの作成を行っています。さらに肝硬変に合併し、ひとたび発症すれば予後不良となる特発性細菌性腹膜炎の臨床的背景を解析し、早期診断のための腹水中好中球エラスターゼ測定法について中央臨床検査部岡本康幸教授と共同で検討を行っています。


3)エンドトキシン(Et)と肝障害
厳密な血中Et測定成績をもとに、アルコール性肝疾患をはじめとする各種肝疾患におけるEt、サイトカインと全身病態との関連を検討しています。Et処理にかかわる結合蛋白やマクロファージ機能の観点から病態解析を進めるとともに、最近ではアルブミン合成への関与やEtレセプターとシグナル伝達機構についての解析を試みています。


4)慢性肝疾患の診断と治療
定期的な肝生検検討会に集積された厖大な資料をもとに、臨床像、血液検査所見から肝組織像をどこまで類推できるか、1,000例を超えるインターフェロン治療成績からどこまで慢性肝炎の予後を予測できるかについて、多変量解析を用いた検討を加えています。


5)肝細胞癌の診断と治療
科内の症例検討会に加えて、放射線科および消化器外科との定期的な症例検討会を行い、症例ごとに最善の治療を選択するように努めています。超音波検査については造影超音波法を診断と局所治療に応用し、治療効果の向上に努めています。また、局所療法としてPEIT、PMCT以外に、現在注目されているラジオ波熱凝固療法についても多数の施行経験をもち、これらの効果について評価するとともに、一層の治療効果を高めるべく検討を加えています。


6)血液凝固異常と肝病態
肝疾患の多くは凝固異常を呈することが知られています。我々はvon Willebrand因子特異的切断酵素(ADAMTS13)に注目し、この酵素の肝疾患における役割について当院輸血部の藤村吉博教授のグループと共同研究を進めており、肝疾患における凝固線溶系制御による新しい治療法の開発に向けて、臨床ならびに基礎的検討を行っています。


7)肝再生医学
近年、万能分化(ES)細胞を用いた様々な臓器再生の基礎的検討が行われています。我々はES細胞を成熟肝細胞に分化誘導するための基礎的検討を、当科出身の寄生虫学教室吉川正英助教授と共同で行っており、将来の再生医療に基づく新規治療法の開発を目指しています。


8)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態解析
近年の肥満人口の増加と共に、高度の脂肪肝に壊死炎症反応、線維化所見が加わった非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が注目されています。本症は非飲酒にもかかわらずアルコール性肝障害類似の肝組織像を呈し、肝硬変に進行し得る疾患で、発症機序として酸化ストレス、鉄沈着、クッパー細胞の機能低下、レプチン、エンドトキシンおよびTNF-αの関与などが考えられていますが、その詳細は不明です。当科では、このNASHの病態と発症機序を解明し、その知見に基づいて新しい治療法の確立を目指しています。


9)肝癌の抗血管新生療法
分子生物学的手法を駆使し、肝細胞癌の発育・進展における血管新生の意義を解明し、血管新生抑制に基づく新しい治療法の開発をめざしています。現在、得られた基礎的知見を基にして院内臨床審査委員会の許可のもとに新規治療法の臨床研究を開始しています。


10)肝線維化の病態解析
細胞外マトリックス分解酵素を阻害するTIMP-1に注目して、分子生物学的手法により肝特異的発現TIMP-1トランスジェニックマウスを作製し、肝線維化病態との関連を検討しています。また肝線維化進展の中心的役割を果たしている活性化肝星細胞の制御による肝線維化進展予防の新規治療法の基礎的検討を行っており、得られた知見を基に院内臨床審査委員会の許可のもとに新規治療法の臨床研究を行っており、有効な治療法として注目を集めています。


11)急性肝不全の病態と治療
急性肝不全の病態生理について多くの劇症肝炎経験例から臨床的に検討を行うと共に、プロスタグランジンの関与についても基礎的側面から検討を加えています。最近では血管新生因子と急性肝不全との関連に注目し、血管新生因子の投与による新規治療法開発の基礎的検討を行っています。


12)胆汁うっ滞性疾患における肝内輸送蛋白
原発性胆汁性肝硬変、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎などにおいて肝内輸送蛋白の発現を検討し、取込み輸送蛋白、胆管側膜排出輸送蛋白の変化の病態生理学的意義を検討しています。


13)胃・十二指腸粘膜病変の病態解析
非ステロイド性抗炎症剤およびHelicobacter pylori(Hp)感染の胃・十二指腸粘膜におよぼす影響について基礎的検討を続けており、最近ではとくにHp感染に伴うモノクロラミンの胃粘膜傷害機序における酸化ストレスの関与に注目し、抗酸化剤を用いた新規治療法の開発の基礎的検討を行っています。


14)内分泌・代謝疾患の研究
当科の内分泌・代謝グループでは下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、性腺と全ての領域を対象とし、各科との連携を密にして高度の医療を提供しています。また成長障害を伴う内分泌疾患を小児科と共に新生児期から管理し治療しています。そのため全身管理を要する内分泌疾患を総合的に、生後から生涯にわたり、管理の対象として治療しています。また代謝疾患としては糖尿病と高脂血症を主な対象とし、特に1型糖尿病に対するintensive careに重点を置いて治療しています。これらの臨床実績をもとに、以下のような研究テーマを設定しています。これらは基本的に多数の臨床例から研究課題を抽出し、その病態の解析から新たな治療への道を開くという方法論に基づいています。
  1. 下垂体腫瘍術後の汎下垂体機能低下症に対するホルモン補充療法、とくに成長期のホルモン補充療法の至適投与量の検討
  2. 成長障害を伴う内分泌疾患の早期発見のためのスクリーニング法の開発(多くの成長ホルモン分泌不全性低身長やターナー症候群、その他性腺疾患を発見しています。)
  3. Klinefelter症候群における過剰X染色体による性腺機能低下の機序
  4. Kallmann症候群における原因遺伝子の解析(早期診断と出生前からの計画的治療を検討しています。)