臨床

ペインクリニック

医療の原点は患者さんの痛みや苦しみに耳を傾け、症状を緩和することである。
臓器別、疾患別の専門的治療ももちろん重要であるが、疾患の治療に重点がおかれすぎると弊害も生じる。
ペインクリニックでは痛みを切り口として全人的にアプローチし、神経ブロックを主とした集学的治療を行っている。自分が痛くなったとき、自分でも受けたいと思える治療を患者さんに行うことが、われわれの目指す医療である。われわれの患者さんには、スタッフの身内の人や、病院内の看護師や医師が少なくない。このような身近な人々が、信頼して治療を受けてくれているという事実が、われわれのひそかな誇りである。

施設

  ペインセンターは平成26年9月に病院本館1階、時間外入口すぐ東側に移動し、5診まである診察室、10台のベッドを有する処置室に加え、新たに透視室が設置されました。外来診察は月曜から金曜日で、透視装置や超音波装置を駆使した神経ブロックを中心に治療を行っています。月曜の午後は手術室で低侵襲手術、木曜と金曜の午後には中央放射線IVRセンターで透視下神経ブロックを施行しています。入院は現在C棟5階に5床有しています
  スタッフは川口教授のほかペインクリニック専門医2名が常駐し、さらに2名の麻酔科スタッフが診療しています。また、麻酔科スタッフや研修医のペインクリニック研修を随時受け入れています。
  当センターの特色は日本でも有数のブロック件数で、あらゆるブロック治療を施行できることで、透視下神経ブロックは年間2500件を超えています。どのような診療科でも良好な患者・医師関係は必要ですが、特にブロック注射という侵襲的な治療を行う際には重要となります。この観点から、当科では初診、診察、説明、処置(ブロック治療)、入院まで全て一人の医師が担当する主治医制をとり、患者さんからの信頼を得るよう努めています。

疾患

外来患者数は曜日によるばらつきあるが、1日40〜80人です。
対象となる症例は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、変形性股関節症や膝関節症、肩関節周囲炎などの関節疾患、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛、術後や外傷後の難治性疼痛(CRPS)、ASOなどの末梢血行障害、頭痛、三叉神経痛、脳脊髄液圧漏出症、癌性疼痛、顔面神経麻痺や突発性難聴などの痛み以外の疾患群と多岐にわたります。

2015年の新患の内訳(計368人)を示すが、当施設の特徴は脊椎や関節などの整形外科疾患が多く、全患者の38%をしめることです。経時的な傾向としては癌性疼痛の割合が減少している。これはWHOのガイドラインの普及と、当院緩和ケアチームの活躍によると考えられる。当科では脳脊髄液減少症の診断、治療を精力的に行っている。2006〜2007年の爆発的な症例数の増加(年間200人)は収束したが、それでもまだ数多くの患者が府県を越えて紹介されている。

治療

  ペインクリニックの治療はブロック治療、薬物治療、運動療法、認知行動療法など多岐にわたり集約的に行う必要があります。当科ではブロック治療はもちろんですが、麻薬や鎮痛補助薬、漢方薬などを駆使した薬物療法と、心理社会的なアプローチを行っています。
  当科の特徴である神経ブロック治療の実際について紹介します。外来でのブロック治療としてはトリガーポイントブロック、関節内注入などを行っています。超音波ガイド下ブロックも近年、増加傾向にあり、頸部神経根ブロック・星状神経節ブロック・肩峰下滑液包ブロック・仙骨ブロック・三叉神経末梢枝ブロックなどがルーチンに行われています。硬膜外ブロックはほとんどの症例が後述の透視下法で行われるようになりました。
  透視下ブロックについて、2014年9月に透視室を持つ新センターが開設され、外来で施行できるようなりました。2013年の透視下ブロック件数は1405例でしたが、年間2500件まで増加し、2016年はさらに増加する見込みです。手術室では、硬膜外刺激電極植込や経皮的髄核摘出術などの低侵襲手術や、硬膜外カテーテル挿入などの厳密な清潔操作が要求される処置を行っています。中央放射線部では主に入院を要する交感神経節ブロックや頸部の神経根ブロックなどを施行しています。
  低侵襲手術では経皮的髄核摘出(年間数例)、椎間板ヘルニア加圧注入(年間数例)、硬膜外刺激電極挿入(年間20例)を行っています。
  多くの症例の経験から、RI脳槽造影よりCT脊髄造影が精確で有用であることを学会報告してきました。厚生労働省の研究班でも我々の主張と同様にCT脊髄造影検査が推奨されています。治療は、硬膜外自家血パッチを透視下に施行し、直後のCTにより評価を行っています。 2016年9月現在で70症例を超す特発性脳脊髄液漏出症症例を経験し、ほぼ100%の治癒が得られました。この結果、関西圏の多くの患者を紹介いただけるようになりました。
  一方、巷では脳脊髄液漏出症に対する硬膜外自家血パッチの有効性が低いと流布されていますが、これは診断の不正確さに起因すると考えています。2002年頃を中心にむち打ち症患者に脳脊髄液漏出症が多く含まれるとの報道がありましたが、実際に外傷後脳脊髄液漏出症と診断できる症例はわずかでした。むち打ち症に対する治療法は別にあり、自家血パッチではありません。
  精確な診断・自家血パッチの成績向上に努めることが我々の責務です。

疾患

  当科では専門性の高い治療を行っています。様々な疼痛疾患に対応できる専門医は少なく、初診時の診療には治療効果を上げるため十分に時間をかける必要があります。またブロック治療は、治療後にベッドでの安静を要するため、ベッド数に対応して患者さんを診療できる数が限られます。このため、当科では完全予約制となっております。診療を希望される患者さんはかかりつけ医から地域連携室にご連絡をいただいて予約をお取りください。

初診患者数

2012年 397
2013年 368
2014年 407
2015年 441

2015年 部位別患者数

腰下肢痛 170
帯状疱疹痛 119
頚部上肢痛 52
内臓神経ブロック
(三叉神経痛)
(脳脊髄液漏出症)
55
(11)
(31)
その他
(癌性疼痛)
(末梢血管障害)
45
(5)
(3)

年別X線透視下神経ブロック・手術件数

2012 2013 2014 2015
胸部交感神経節ブロック 86 57 76 82
腰部交感神経節ブロック 116 65 74 90
傍脊椎神経ブロック 63 40 56 97
椎間・仙腸関節ブロック 19 5 4 18
神経根ブロック
(頸部) 237 200 176 219
(胸部) 154 218 190 313
(腰部) 349 425 557 1078
高周波・神経根ブロック 31 101 88 130
関節造影、関節枝熱凝固 42 34 80 60
硬膜外ブロック 140 65 100 291
椎間板ブロック 13 10 11 19
三叉神経ブロック 71 104 36 40
内臓神経ブロック 3 7 8 5
脊髄刺激療法 10 23 26 9
脊髄造影CT 7 22 15 22
硬膜外自己血パッチ 11 28 18 32
その他 1 0 0 1
合計 1353 1404 1515 2506