甲状腺疾患合併妊娠

甲状腺疾患とは
 甲状腺とは代謝を司るホルモンを分泌する臓器であり、その疾患とは大きく分けて二つあります。すなわち、甲状腺機能亢進症(ホルモン過剰)と甲状腺機能低下症(ホルモン不足)です。

甲状腺機能亢進症
代表的な疾患 :バセドウ病など
症状:動悸、発汗、眼球突出、手指のふるえ、体重減少、食欲亢進、下痢、情緒不安定、甲状腺(のどぼとけの下あたり)の腫大など

甲状腺機能低下症
代表的な疾患 橋本病、甲状腺の術後など
症状 全身倦怠感、眠気、冷え性、浮腫(むくみ)、体重増加、食欲低下、便秘、皮膚乾燥

 これらのうち、バセドウ病や橋本病は自己免疫疾患の一種であり、自己抗体と呼ばれる抗体が自らの臓器やホルモンの機能を障害している疾患です。

妊娠中の甲状腺機能
 妊娠中は生理的に甲状腺機能が変化します。妊娠初期には一過性に機能亢進傾向となり、中期から後期には機能低下傾向となります。そして妊娠終了とともに甲状腺ホルモンは増加し、非妊時の正常範囲内へと戻ります。

甲状腺疾患と妊娠
 疾患の状態によって妊娠に及ぼす影響は大きく左右されます。そのため早期発見・早期の治療開始が重要です。妊娠前からこれらの疾患にかかっていることが分かっている場合は治療を行い、良好な管理状態となった上での妊娠が望ましいと言えます。

(1) 甲状腺機能亢進症
 適切な治療がなされていない場合、早産や死産、妊娠高血圧腎症(以前の妊娠中毒症)、子宮内胎児発育遅延(IUGRと略します)などのリスクが高くなります。また、生まれた赤ちゃんに甲状腺機能亢進症がおこることもあります。
 治療:抗甲状腺剤の内服を行います。妊娠中期には生理的変化により一時的に疾患が改善したかのようになりますが、分娩後に再び悪化することが多いです。また、分娩時などに高度の甲状腺中毒状態になることがあるので注意が必要です。

(2) 甲状腺機能低下症
 適切な治療がなされていない場合、流産、妊娠高血圧腎症やIUGRのリスクが高くなります。また、赤ちゃんの甲状腺機能低下が起こることがあります。
 橋本病の場合は自己免疫疾患であるため、妊娠中に改善し分娩後に悪化することが多いとされます。
 治療:甲状腺ホルモン剤による補充を行います。

※どちらの疾患にも言えることですが、妊娠中はホルモンの変動が激しいため、投与量が適当であるかどうかを頻回にチェックする必要があります。医師の指示に従って下さい。