子宮外妊娠の診断と治療

 部位別の頻度では、卵管妊娠が大部分(98%)を占める。そのうち80%が卵管膨大部妊娠である。超音波診断装置の普及と妊娠検査薬の感度の上昇、血中及び尿中hCGの測定の簡便性により、子宮外妊娠の診断精度は以前よりはるかに上昇した。しかしながら実際の臨床においては、未だその診断に苦慮する事があるのが現状である。以下に示す事柄をふまえ、総合的に診断する事が望ましい。

(診断について)

(1) 問診
 子宮外妊娠の診断上極めて重要である。妊娠歴、既往歴はもとより、最終月経として、妊娠成立の責任月経を明らかにすることが大切である。できるだけ正確な妊娠周数を算定する為に、性交のあった時期、妊娠反応が初めて要請となった時期などが参考になることもある。症状としては、大部分が何らかの下腹部痛を訴える。また不正性器出血は約50〜70%にみられる。

(2) 基礎体温(BBT)
 正確な妊娠週数を知る上で重要な情報となる。

(3) 内診所見
 妊娠週数に比して小さい子宮体部、付属器周囲の腫瘤、抵抗、圧痛、子宮膣部の移動痛などが認められる。

(4) hCG測定
 正常妊娠では、着床開始後まもなくhCGが検出され始め、妊娠4週0日で血中hCG値は100〜200 IU/lとなり、5週0日には約2000〜4000 IU/lと指数関数的に増加する。子宮外妊娠の場合は、着床部位が子宮体部内膜以外の部位でおこるので、hCGの産生、分泌量は正常妊娠時に比し低値を示す。超音波で胎嚢が検出可能となる血中hCG値のレベル(discriminatory zone)は概ね1000〜2000 IU/lとする報告が多く、2000 IU/l以上のhCG分泌がありながら子宮内の胎嚢を認めない場合は、子宮外妊娠を疑う。

(5) 超音波断層法

a. 子宮内所見
 経膣超音波では子宮内胎嚢(GS)像は妊娠4週後半から検出可能で、5週前半までにほぼ100%検出される。約1/30000の頻度とされる子宮内外同時妊娠を除き、子宮外妊娠は否定される。しかし体外受精後の妊娠では内外同時妊娠に頻度が1〜3%と上昇する事が知られている。また子宮外妊娠でもGS様のリング状エコー、いわゆるpseudo-GSを子宮内に認めることもあるが、その頻度は約5%程度とされている。

b. 子宮外所見
 子宮外の付属器領域に原始卵黄嚢(yolk sac)、あるいは胎芽心拍を有するGSが認められれば子宮外妊娠と診断しうる。しかしながら子宮外妊娠の付属器腫瘤の超音波像は多様で、一般には辺縁不整なecho free spaceを含む腫瘤像として描出される事が多い。また腹腔内出血は経膣超音波で明瞭に観察され、点状びまん性のエコー(scatter)の有無により貯留液が血液であるか否かが推定可能ではあるが、時にダグラス窩穿刺を必要とすることもある。

(6) 子宮内容除去術
 妊娠希望のない例、あるいは継続希望はあってもhCG値や超音波像と妊娠週数から子宮内妊娠が正常に経過している事が否定される場合は、子宮内容除去術により絨毛組織の有無を確認する事が重要な補助診断法のひとつとなる。

(7) 腹腔鏡検査
 以上のような検査から子宮外妊娠が疑われた場合、確定診断を得る為に腹腔鏡検査を行う。後述する治療を兼ねた診断法としての有用性は大きい。

(治療について)

 子宮外妊娠の治療は、妊娠の着床した臓器を摘出する根治手術と、機能温存を図る保存的治療に大別される。

a. 根治手術
 今後の妊孕性温存希望のない症例や破裂・癒着などにより卵管の損傷が著しく、再建が不可能と判断した例に適応される。多くの例で腹腔鏡手術が適用されているのが現状である。

b. 保存的治療
 以下の待機的管理、外科的治療、薬物治療に分けられる。

(1) 待機的管理
 腫瘤径5cm未満に加え、血中hCG2000 IU/l以下の例。あるいは血中hCG1000 IU/l未満の例を対象とすることで高率に待機的管理に成功したという報告がある。しかしながら最近では血中hCG値の推移が最も信頼性が高いという報告も相次ぎ、診断時hCG値に関わらず、経時的に測定したhCG値が継続的に低下する症例を待機的管理の対象とすることが多いのが現状である。

(2) 外科的治療
@. 開腹手術
 術式としては卵管部分切除・端々吻合・卵管切開内容除去、部分切除、遠位端開口、卵管内容圧出などがある。これらの手術はいずれも腹腔鏡下にも手術可能であり、最近では開腹保存手術は卵管損傷の著しく強い例、腹腔鏡下手術の遂行が困難な例などに限定される。

A. 腹腔鏡手術
 主として卵管膨大部妊娠に適応される。間質部、峡部妊娠では治療後に卵管閉塞をきたす可能性が高く、後述する薬物療法が望ましい。また本法による治療後約5〜10%の確率で絨毛細胞の残存によるpersistent ectopic pregnancyが発症する事が知られており、注意深い経過観察が必要である。

(3) 薬物治療
 アクチノマイシンD、高張ブドウ糖、プロスタグランジン、メソトレキセート(MTX)などの薬剤の使用が試みられてきたが、現在主として用いられいる後2者について述べる。

@. プロスタグランジン療法
 卵管の蠕動亢進、血管収縮作用による卵管の虚血、黄体退行作用を期待して用いられる。

A. MTX療法

全身投与
 急性腹症を呈するような症例に対する外科的治療の必要性は論を待たないが、無症状あるいは軽度の自覚症状を有するのみの例では、外科的治療の対象とせずMTXによる治療が第一選択と考えられてきている。中でも欧米ではMTX全身投与と腹腔鏡下卵管切開との間に差がないことが示され、もはや外妊は内科疾患として扱われており、MTX全身投与は外科的治療に比して十分な代替となる事が確認されている。

局所投与
 腹腔鏡下穿刺と経膣超音波ガイド下穿刺の2法がある。より侵襲の少ない後者が選択される事が多い。ただ、妊娠部位の同定が不可能な症例には適応できないことと、成功率が64%〜95%と幅があり、術者の技量に大きく左右される事から普及は全身投与に及ばないのが現状である。しかしながら副作用が殆ど認められないという大きな優位性がある。