研究テーマ

薬剤耐性菌は、医療機関において治療の難渋化のみならず感染拡大など多くの問題を抱えています。この耐性菌は耐性遺伝子の獲得や、自身の変化(突然変異)などで出現しており、さらに現在でも新しい耐性機構を獲得するなどして進化しています。

世界中でも問題となっている、カルバペネム系薬耐性腸内細菌科(CRE)、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)インフルエンザ菌などを対象に、耐性機構の解明ならびに病原微生物が感染症を引き起こす仕組みについての研究に取り組んでいます。

1.薬剤耐性菌の耐性メカニズム解明
抗菌力の高い抗菌薬であるカルバペネム系薬やフルオロキノロン系薬に対する耐性菌が出現し、また増加傾向にあることがWHOなどからも警告されています。
我々の研究室ではこれら耐性菌の詳細な耐性機序の解析ならびに分子疫学調査を行っています。
また、今後も次々と新しい耐性菌の出現が予想されることから、その遺伝学的、酵素学的解析を行い、これらの知見から迅速かつ正確に検出する新規検出法の開発に取り組んでいます。

2.薬剤耐性菌の耐性獲得機構の解明
カルバペネマーゼ、ESBL、AmpCなどのβ-ラクタマーゼはプラスミド上にコードされることで他の細菌に伝達され拡散される危険性があります。
我々はこのプラスミドに着眼し、臨床の現場で薬剤使用によって生体内でどのようにプラスミドが伝達され耐性菌が出現するか、その解明を目指しています。
耐性菌が出現、拡散される仕組みを解明することで、耐性菌を生み出さないための新たな抗菌薬の使用方法や新しい作用機序の抗菌薬(プラスミドの伝達阻害薬など)の創薬が期待できます。

3.細胞内寄生細菌のエスケープ機構解析
結核菌、サルモネラ、リステリア等の細菌は、生体の樹状細胞やマクロファージ内で殺菌機構から逃れ、細胞内で増殖し重篤な感染症を引き起こします。
これらの病原菌がどのようにして細胞内の殺菌機構に抵抗性を発現するのか、その機序を解析しています。
細胞内殺菌機構から逃れた病原菌に免疫系はどのように作動するかも併せて解析しています。

4.市中感染菌の薬剤耐性と伝播拡散に関する研究
肺炎球菌、インフルエンザ菌、市中感染型MRSAなどの市中感染菌に関する伝播拡散機序の解析研究を行うとともに、病原性解析にも取り組み、市中感染症の発症予防に結びつく総合的な微生物学研究を進めています。