御挨拶                  
奈良県立医科大学輸血部教授(部長) 松本雅則

 この度、平成26年4月1日付けで輸血部教授・部長に就任しました。私は、藤村吉博前教授のもとで15年間当院の輸血部で勤務してきましたので、それを引き継ぎ、さらなる発展を目指します。輸血部は、大学病院の中央部門ではありますが、臨床(診療)のみならず、教育と研究も積極的に行っています。 まず、臨床ですが、輸血部の大きな使命は、適正で安全な輸血医療を行うことです。そのため当院輸血部では、少数の輸血部技師のみで24時間、365日当直するという全国でも珍しい体制をとっています。それによって、輸血という特殊な業務の安全性を高めたいと考えています。さらに、アルブミン、免疫グロブリン、第8因子製剤などの血漿分画製剤の管理も輸血部で行っています。これは、血漿分画製剤も血液由来であるという認識を持ってもらうために有効な体制であると考えております。また、当院では在院日数の低下とともに自己血輸血率の低下が認められていますが、自己血輸血を推進することで、同種血輸血を回避することを目指しています。造血幹細胞移植のための幹細胞採取・保存も輸血部の重要な役割と考えております。 研究に関しては、臨床、特に輸血医療に役立つ研究を継続していきたいと考えています。当院輸血部では1998年から日本全国の医療機関からの依頼によって、血栓性微小血管障害症(TMA)疑い患者の病態解析を行っています。TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)におけるADAMTS13解析、aHUS(非典型溶血性尿毒症症候群)における補体制御因子解析などを中心に、TMA解析センターとして活動し、日本国内の症例で1200例を超えるTMAの解析を行いました。 輸血医療はかなりエビデンス(科学的根拠)に従って行われるようになりましたが、まだまだ経験による部分が多い医療です。このような状況を改善するには、自ら新たなエビデンスを作る努力が必要だと思います。我々は、この15年間のADAMTS13を中心としたTMA研究を通じて、血漿交換の有用性、血小板輸血禁忌などの輸血医療に直結したエビデンスを得ることができました。今後も、このような臨床に直結した研究を行っていきたいと考えております。 。

平成26年4月吉日 記


御挨拶                  
奈良県立医科大学輸血部・前部長(名誉教授) 藤村吉博

 この度、奈良県立医科大学輸血部ホームページを大幅に改定する事になりました。これを機会に当輸血部の沿革と現況について少しご紹介したいと思います。
 昭和39年に政府は献血推進政策を打ち出しましたが、これを受けて昭和40年4月に当大学構内に奈良県血液センターが設けられ、所長(兼任)には吉田邦男小児科教授が任ぜられました。本院輸血部はこの血液センターに業務協力するという形で昭和41年4月に新たに設けられ、初代輸血部長として堀浩脳神経外科教授が兼任される事になりました。昭和46年7月に奈良県血液センターが奈良県赤十字血液センターに移受されたのを区切りに、病態検査学の梅垣健三教授が第二代輸血部長に任ぜられ、その後、昭和56年の新病棟(現A病棟)完成時に福井弘小児科教授が第三代輸血部長として引き継がれました。福井部長は平成5年に退官され、以後3年6ヶ月間は成田亘啓第二内科教授が第四代輸血部長となられました。平成8年10月からは、私が新たに設けられた専任の輸血部教授職を拝命する事になりましたが、当時、全国の国公立大学で輸血部専任教授は私を含めて3名のみでした。時代の趨勢を読み、このような組織改革をされたのは当時の学長 辻井正先生でした。本学のこの組織改革は輸血学会にも大きなインパクトを与えたようで、以後3つの国公立大学輸血部に新たに専任教授職が設けられました。
 私は小児科勤務、3年間の米国留学期間を経て、昭和62年1月に当輸血部に奉職しました。着任以来、輸血の一般業務管理に加えて、特に力を入れてきた点は、1)輸血感染症(特にHIVとHCV)のリアルタイムでの鋭敏検査法の確立、2)自己血輸血推進、3)多彩な造血幹細胞移植のシステム構築、4)血小板輸血の適正使用、そして5)輸血製剤の費用対効果の5項目です。このうち、1)―3)については院内各臨床科の協力を得て目的を略達成、そして4)については、本来、止血効果が絶大である血小板輸血で、逆に血栓を助長することになる血栓性微小血管障害症やへパリン起因性血小板減少症等の「血小板輸血禁忌」と考えられる病態を早期に診断する体制の確立を行いました。この仕事は私のライフワークであるフォンビルブランド因子やその切断酵素ADAMTS13の研究を通じて達成されたものです。また本研究を通じて、平成20年には大学輸血部教員としては全国で初めて「Ba¨lz賞」という栄誉ある医学賞を松本准教授等計6名と共に受賞させて頂く事になりました。5)については輸血の一般製剤やアルブミン製剤は勿論のことですが、本院のように止血異常症の患者を数多く治療している医療施設では、凝固因子製剤を含む包括的血液製剤管理が、費用対効果の面でも不可避と考えられ、平成21年4月より、全血液製剤の輸血部一元管理を達成し、順調に稼働しております。今後共、院内外の皆様の御協力を得て、より良き輸血医療の実践に尽くす所存ですので宜しくお願い申しあげます。

平成22年1月吉日 記