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外科マスター

奈良県立附属病院に勤務する優れた外科手術手技を持つ医師に対して与えられる「外科マスター」の称号を授与いたしました。

前立線小線源治療講座 田中宣道

奈良県立医科大学における前立腺小線源治療

外科マスター称号付与について

田中先生

前立腺癌に対するヨウ素125密封小線源治療は2003年に本邦において開始され、奈良県立医科大学では2004年7月に近畿地方で最初に本治療を開始した歴史を持ちます。これまでの19年間に1919例(2023年12月末現在)に対して本治療を施行してきました。これは西日本でナンバー1の症例数であり、全国でも有数の治療実績を誇っています。

小線源治療は、泌尿器科医と放射線治療科医が共同して行う治療であり、どちらか主導するわけでなく、全くイーブンの関係で治療していくという他に類を見ない治療であることが特徴です。

この度、前立腺小線源治療マスターの称号を付与されたことは、私個人に与えられた称号ではなく、我々チームとして与えられた名誉であると受け止めています。

治療成績

小線源治療では外部照射と比較して、前立腺局所へ高線量を投与でき、周囲への線量を軽減しつつ、急峻な線量勾配を生み出せる長所があります(図 1)。  一般的に、前立腺癌治療において、手術、外部照射、組織内照射(小線源治療)の治療成績は同等とされています。特に、低リスク、中間リスクの成績は、いずれの治療法でも良好であり、治療後のQOLやライフスタイルから治療が選択されています。一方、高リスク症例における手術単独、外部照射の再発率が高くなりますが、小線源治療(トリモダリティ:外部照射およびホルモン治療併用)の治療成績は手術単独、外部照射単独よりも良好です。奈良県立医科大学の長期成績でも低リスク、中間リスク、高リスクの10年生化学的非再発率は90%前後と、リスク別にも成績に差が無く、非常に高い非再発率を示しています(図 2)。約20年間にわたり症例の蓄積と治療法の革新を行ってきました。さらなる治療成績の向上と有害事象の軽減、QOLの維持を目的に様々な取り組みを行ってきました。

図1

図2

われわれの取り組み

これまでの治療法の変遷を表1に示します。2004年に治療開始時は、術前計画法(プレプラン法)にて開始しましたが、2006年には術直前計画法へ変更、さらに至適線量確保の目的に、単独療法の処方線量を160Gyに増加、2008年からは術中計画法に変更しました。 2011年には再発症例に対するサルベージ小線源治療を開始。その後、2014年から連結線源とフリー線源を併用するHybrid法を開発・採用。

2014年2月に、ハワイ大学見学を機に、尿道バルーンカテーテル非留置による、尿道内 air bubble 注入による、より解剖学的尿道位置に近い状態での治療法へ変更。さらに2017年1月からは表2に示すプロトコールへ変更しました。その後、精嚢浸潤症例を主に対象とした高線量率小線源治療を開始(金沢大学方式を踏襲した小線源治療1回照射法を奈良医大方式へ改変)。2024年2月末までに120例の高線量率小線源治療を行いました。2018年11月には、ハイドロゲルスペーサーの導入。Hybrid 法における線源組み立てシステムであるアイソローダーを導入。2021年1月からは、neoadjuvant ホルモン治療症例は  1か月目のD90が有意に治療直後より低下することを受けてD90線量目標を 増加(Int J Urol. 2022)。また、低リスク症例に対するFocal Brachytherapy プロトコールを作成、自主研究として開始しました。このように、治療症例を集積するとともに、治療成績の向上を図るための取り組みを行っています。また、治療成績向上のみならず、有害事象、QOLの維持等を目的とした ランダム化無作為試験および特定臨床研究を行っています(表 3)。さらに、2024年1月から ホルモン治療期間を 短縮し高齢者には一部の高リスク(グリソンスコア:4+4)症例に対して小線源単独治療行う新しいプロトコールへ変更しました(表 4)。

表1

表2

表3

表4

これからの取り組み

これまでの取り組みから得られた知見をもとに、さらなる治療成績向上、 有害事象の軽減、QOLの維持を目的にした治療法の開発・研究に取り組んでいます。また、後進の育成、大学院生受け入れのもと、基礎研究から臨床への橋渡し研究についても取り組んでいます。奈良県立科大学における小線源治療についてご興味がある医療従事者の方は、お気軽にご連絡いただければ幸いです。

文責 田中宣道 2024年2月29日

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