患者様へ

集中治療

医療の原点は患者さんの痛みや苦しみに耳を傾け,症状を緩和することです。しかし,臓器別,疾患別の専門的治療では病気を治すことに重点が置かれ、苦痛の緩和が置き去りにされていることもあります。ペインクリニックでは「痛み」を切り口に全人的にアプローチし、神経ブロックを主とした集学的治療を行っています。

施設

 ペインセンターは病院本館1階、時間外入口すぐ東側にあります。5診まである診察室、10台のベッドを有する処置室に加え、X線透視室(処置室)を併設しています。外来診察は月曜から金曜日で、透視装置や超音波装置を駆使した神経ブロックを中心に治療を行っています。月曜の午後は手術室で低侵襲手術、木曜と金曜の午後には中央放射線IVRセンターで透視下神経ブロックを施行しています。入院は現在C棟5階に3床有しています。
スタッフは川口教授のほかペインクリニック専門医3名と、麻酔科専門医1名です。また、麻酔科スタッフや研修医のペインクリニック研修を随時受け入れています。

特徴

 当センターではブロック治療を主体とした治療を行います。ブロック治療とは硬膜外ブロックだけではなく、痛みの原因なる部位に注射をして痛みを緩和する手技の総称です。我々は超音波装置やX線透視装置を用いて、さまざまなブロック治療を施行しています。X線透視下神経ブロックは年間約3000件で、大学病院では日本でも有数の件数を誇ります。
どのような診療科でも良好な患者・医師関係は必要ですが、特にブロック治療という侵襲的な治療を行う際には重要となります。この観点から、当科では初診、診察、説明、処置(ブロック治療)、入院まで全て一人の医師が担当する主治医制をとり、患者さんからの信頼を得るよう努めています。
また週に一度、慢性疼痛外来を開設し、リハビリテーションを中心とした集学的治療の取り組みも始めています。

治療

 ペインクリニックの治療はブロック治療、薬物治療、運動療法、認知行動療法など多岐にわたり集約的に行う必要があります。当科ではブロック治療はもちろんですが、麻薬や鎮痛補助薬、漢方薬などを駆使した薬物療法と、心理社会的なアプローチを行っています。
当科の特徴であるブロック治療の実際について紹介します。外来でのブロック治療としてはトリガーポイント注射、関節内注入などを行っています。超音波ガイド下ブロックも近年、増加傾向にあり、頸部神経根ブロック・星状神経節ブロック・肩峰下滑液包ブロック・仙骨ブロック・三叉神経末梢枝ブロックなどが行われています。硬膜外ブロックはほとんどの症例が後述の透視下法で行われるようになりました。
透視下ブロックについて、2014年9月に透視室を持つ新センターが開設され、外来で施行できるようなりました。2013年の透視下ブロック件数は1405例でしたが、年間3000件まで増加しています。手術室では、硬膜外刺激電極植込や経皮的髄核摘出術、硬膜外腔癒着剥離術などの低侵襲手術を行っています。中央放射線部では主に入院を要する交感神経節ブロックや頸部の神経根ブロック、CT脊髄造影や透視下硬膜外自家血パッチなどを施行しています。
ブロック治療は痛みの原因となっている病変部に、薬液を注入し電気刺激などを行う治療です。治療の効果を高めるためには精確な診断が必要です。我々は丁寧な問診、身体所見をとり、MRIなどの画像検査を行って診断に努めています。また、診断の補助で試験的にブロック治療を用いることもあります。このような診断の結果、病気によってはブロック治療をすべき病変がないことや効果が期待できないことがあります。その際には、内服治療や運動療法など他の治療をお勧めしています。

疾患

 当科では専門性の高い治療を行っています。様々な疼痛疾患に対応できる専門医は少なく、初診時の診療には治療効果を上げるため十分に時間をかける必要があります。またブロック治療は、治療後にベッドでの安静を要するため、ベッド数に対応して患者さんを診療できる数が限られます。このため、当科では完全予約制となっております。診療を希望される患者さんはかかりつけ医から地域連携室にご連絡をいただいて予約をお取りください。

初患病名

  2022年 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年
帯状疱疹関連痛 112 104 104 126 112 131
腰下肢痛 141 186
152 155 140 146
頚肩上肢痛 42 42 43 51 44 61
頭痛・顔面痛 38 39 44 64 53 52
がん性疼痛 7 8 4 5 5 13
末梢血管障害 11 4 2 6 3 6
その他 56 46 34 39 55 40
慢性疼痛外来 11 6        
合計 418 435 383 446 412 449

年別X線透視下神経ブロック件数

  2022年 2021年 2020年 2019年
硬膜外ブロック 352 364 287 311
腰部神経根ブロック 1272 1220 1194 1418
頚/胸部神経根ブロック 259 228 294 377
神経根PRF 127 127 118 99
椎間関節・後枝内側枝
ブロック/RF/ PRF(仙腸含む)
450 432 217 165
交感神経節ブロック 79 106 116 130
椎間板造影 7 6 7 5
腹腔神経叢ブロック 3 3 1 1
三叉神経節・三叉神経ブロック 22 20 22 14
関節造影(肩/股など) 88 95 104 110
脊柱起立筋・大腰筋筋溝ブロック 359 224 192 92
硬膜外自家血パッチ/CT脊髄造影 12 11 40 52
合計 3036 2836 2592 2774

年別低侵襲手術件数

2022年 2021年 2020年 2019年
硬膜外腔癒着剥離術 25 17 18 27
脊髄刺激療法 23 8 11 8

超音波ガイド下神経ブロック件数

2022年 2021年
星状神経節ブロック 552 327
仙骨ブロック 279 170
筋膜リリース 152 106
頚部神経根ブロック 100 59
肩峰下滑液包注入 47 49
梨状筋ブロック 15  
三叉神経末梢枝ブロック 41 23
その他 51 30
合計 1237 764

問い合わせ

〒634-8522
奈良県橿原市四条町840
奈良県立医科大学附属病院 ペインセンター
TEL:0744-22-3051