研究

基礎研究

癌細胞に対する周術期使用薬剤の関連性評価

 全身麻酔薬や麻薬性鎮痛薬などの周術期に使用される薬剤が癌患者の予後に関連する可能性について、癌培養細胞を用いた研究を行なっています。特に増殖能に与える影響とそのメカニズムについての検討を施行しています。癌患者の予後改善を目指した周術期管理法の確立を目標にしています。

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モルヒネ48時間暴露による口腔癌細胞HSC-3の細胞周期解析

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モルヒネ48時間暴露による口腔癌細胞HSC-3のNF-κB解析
(研究担当者:西和田忠)

ARDSにおけるエピジェネティクス関連分子Setdb2の役割/血管内皮細胞の分子制御によるARDSの病態解明

 エピジェネティクスとはDNA配列とは別の遺伝情報の伝達・制御システムのことで、その関連分子Setdb2については、近年炎症との関わりについて報告が相次いでいます。1,2)  またARDSの病態の中心的役割を血管内皮細胞が担っていると考えられています。3) 我々は当院ICUに入室されたARDS患者さんにおけるSetdb2の関わり、および、血管内皮細胞に着目したARDSの分子メカニズムを本学免疫学講座(伊藤利洋教授)と共に研究しています。
1)Andrew S. Kimball et al., 2019, Immunity.
2)William J. Melvin et al., 2021, PNAS.
3)Takeshi Kawasaki et al., 2015, AJRCMB.

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(研究担当者:園部奨太/紺田眞規子)

輸血製剤に替わる人工赤血球製剤に関する研究

 ヘモグロビン小胞体(Hemoglobin Vesicles; HbV)は人工的に作製された酸素運搬体でありヘモグロビンとそれを内包する脂質二重膜で構成されている。我々は呼吸不全時にHbVを投与することで酸素化維持が可能であることを示した。
 現在はHbVの溶血がほとんどないという特性に着目し、大量輸血時の腎機能に与える影響について濃厚赤血球液をコントロールとして検討中である。(文科科研「 ヘモグロビン小胞体のAKI予防効果についての検討」) (研究担当者:内藤祐介)

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superoxide rich環境が脳虚血再灌流に与える影響

 心肺蘇生率の上昇により蘇生後脳症が問題になっており、その脳障害の成因の一つに、superoxideを主とするフリーラジカルによる虚血再灌流障害があります。従来、この虚血再灌流障害に対する耐性を得るためのpreconditioningには、致死的ではないがそれに準じる重篤な障害を生体に与える必要がありました。
 superoxideは基本的に組織障害性があり、superoxide dismutase(SOD)にて抑制され、高レベルsuperoxideはSODを阻害するが、逆に低レベルsuperoxideはSODを活性化させるといわれています。
そのため、低レベルsuperoxide環境下に存在することにより、生体に障害なしで虚血再灌流障害に対する耐性を獲得することが可能ではないかと期待できます。
 本研究では、ラットの脳虚血モデルを用い、superoxide含有環境が虚血再灌流障害に与える影響について検討しています。 (研究担当者:植村景子、井上聡己)