2019年度活動報告

理事長挨拶

平素は、本学に対して格別のご支援・ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
「未来への飛躍」基金は皆様からのご理解とご協力を得て、2019年で5年目となりました。
これまで多くの卒業生、保護者や教職員の皆様に加え、一般の方々や法人・団体の方からご寄附を賜り誠にありがとうございます。いただいたご寄附は、教育・研究・診療活動の充実や、臨床研究中核病院承認取得へ向けた取組、キャンパス移転に伴う施設整備等へ大切に活用いたしております。
大学統廃合の時代に、本学が存在感のある大学として存続し、日本を代表する特別な医科大学になるために、皆様からの基金への継続的なご支援が不可欠です。
皆様には引き続き温かいご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

公立大学法人 奈良県立医科大学
理事長・学長細井 裕司

学長補佐挨拶

平素より、皆様におかれましてはご健勝のこととお慶び申し上げます。
本基金設立以来、卒業生・教職員をはじめ多くの皆様からご支援を賜りまして誠にありがとうございます。「未来への飛躍」基金では、皆様のご協力を得て教育・研究・診療活動への支援や、臨床研究中核病院承認に向けた体制整備など、幅広い支援をさせていただいております。
県民の方々をはじめ、多くの人々の健康を支える役割を担う奈良県唯一の医科大学として、最善の医療の提供は欠かせません。そのために、よき医療人を育成するための場や最新の医療技術を学ぶ環境が提供できるよう、今後も支援をおこなっていきます。
皆様からいただいたご寄附は、基金の目的に沿って、本学の発展のために大切に活用させていただきますので、今後とも基金へのあたたかいご支援とご協力をお願いいたします。

学長補佐
(「 未来への飛躍」基金担当 )𠮷治 仁志

2019年度実績のご報告

奈良県立医科大学「未来への飛躍」基金は、創設から5年目を迎え、本学卒業生を始めとする多くの方々からのご支援・ご協力により、総額約8億円のご寄附をいただいております。
皆様からいただいたご寄附は、基金の目的に沿って、大学・学生への支援等幅広く活用させていただいております。

2019年度寄附申込額と使途実績

2019年度 基金使途事業内訳
取組名事業名事業概要内訳支出額
研究の更なる飛躍及びリサーチマインドを醸成するための取組 大学院医学研究科博士課程入学者に対する奨学金 希望者に対して入学金相当額及び授業料相当額の奨学金 入学金相当額:282,000円×7人
授業料相当額:535,800円×13人
8,939,400円
リサーチ・クラークシップへの助成 医学科2年生対象の国内及び海外の研究室での実習に対して宿泊費(約70日分)を助成 国内助成:(14人)4,256,577円(上限1泊5,000円) 6,826,941円
海外助成:(10人)2,570,364円(上限1泊5,000円)
未来基礎医学への活動支援 学生の研究支援を行う講座の活動費を助成 消耗品費、備品費、図書費、郵送料等 2,000,000円
将来を担う優れた人材育成を目的とした修学環境の向上 医学科臨床実習への助成 医学科6年生対象の病院での臨床実習に対して宿泊費を助成(4週間・8週間) 宿泊費:(3人)150,800円 150,800円
看護学科臨床研修(国際看護論Ⅱ)への助成 看護学科4 年生を対象とした海外研修に対して宿泊費を助成 宿泊費:(4人)110,000円 110,000円
ADVANCED CLINICAL ENGLISH Ⅱ(海外留学)への助成 医学科3~6年生、看護学科全学年を対象としたニュージーランドでの海外留学に対して交通費、宿泊費、実習費等を助成 学生10人分:840,370円
教員1人分旅費・実習費:839,630円
1,680,000円
臨床英語での教育活動への助成 海外への臨床実習・留学への教育活動費の助成 臨床英語教育にかかる人件費:2,199,691円 2,199,691円
クラブ活動への助成 クラブ活動に必要な環境整備への助成 西医体エントリー代:1,818,580円、コンセント増設:295,920円、バッティングゲージ:1,313,400円、駐輪場改修:2,006,400円、洗濯機:215,820円、体育館等備品:501,204円 6,151,324円
新入学生への応援支援 入学式後、医学科・看護学科の新入学生保護者を対象とした説明会・懇談会への支援 会場使用料:631,000円、飲食・花代:1,271,378円、吊看板代:48,600円、大型バス(6台):291,600円、謝金等:222,740円 2,465,318円
看護学科学生への支援 看護学科学生へ実習用白衣及びシューズを授与 実習白衣及びシューズ代(85人):1,360,900円 1,360,900円
国家試験対策への支援 医学科生及び看護学科生へ国家試験対策模試費用を支援 医師国家試験模試:1,129,400円
看護師・保健師国家試験模試:382,200円
1,511,600円
本学と地域社会との繋がりを強化するための取組 健康長寿イベント事業への助成 本学と地域社会との繋がりを強化するための取組である健康長寿イベントへの助成 健康フェア2019へ助成:1,000,000円 1,000,000円
臨床研究中核病院承認取得への取組に対する助成 臨床研究中核病院承認に向けた、トップクラスの医療提供と医療者の確保・育成を目指すための体制整備 臨床研究センター人件費(教員をのぞく):21,338,566円
(2019年度は他財源からその他人件費約4,000万円を支出)
21,338,566円
募金推進事業 印刷費・郵送費・広報費等 4,416,776円
60,151,316

※基礎医学系又は社会医学系を主科目として選択した者は返還を免除

活用事業のご報告

「未来への飛躍」基金の使途から一部ご紹介します。

教育・研究への支援

01 リサーチ・クラークシップ

医学科2年生を対象に、学生自ら直接専門領域の研究内容に触れ、さらには高度な実験科学の進め方を実際に体得するための授業です。
研究活動の意義及びそれを支える研究者の心を理解してresearch mindを培うことを目的とします。国内及び海外の研究室での11週間の実習で、宿泊費の一部を本基金から助成しました。

早稲田大学 先進理工学部へ実習留学をしました

2年生という早いうちから研究に触れ、本当に貴重な経験ができました。臨床医という選択肢だけでなく、実際に基礎医学研究に触れてみて、重要性がわかりました。今回の経験が将来について考えるとてもいいきっかけになったのではないかと思います。
学外での研究実習に参加を悩んでいる方へ、私は研究室を選ぶ際に研究内容を重視しました。楽をしようと思うのではなく、自分の興味のある分野の研究室を選ぶと、この2ヶ月間とても楽しくなると思います。この短い期間をうまく使って研究についてよく学び、そしてたくさんの人と交流し、有意義な時間を過ごしていただければと思います。
最後に、このような貴重な経験を可能にしてくださった「未来への飛躍」基金には深く感謝をしております。今回学んだことを生かしてこれからの勉強に生かしていきます。

医学科 2年生南 俊太朗さん

前列右より2人目 … 南さん

日本医科大学微生物・免疫学教室へ実習留学をしました

この実習は、将来臨床の現場で仕事をしつつ、免疫に関する研究をしたいと考えていた私にとって、実際にそうした生活を送られている先生方の仕事ぶりを見られたことは、大変有意義なものとなりました。また、研究の経験がない人にこそ、リサーチ・クラークシップは重要なものになると思います。私にとって、実習期間中に研究の面白さだけではなく、難しさや厳しさ等のネガティブな面も知ることができたのは、大変意味のあるものでした。
また、金銭的支援をしてくださった「未来への飛躍」基金には感謝しております。学外へ留学するには多くの費用が掛かること、それを支援していただけることがどれだけ恵まれているかを痛烈に感じることができました。この機会を無駄にすることのないように、これからも勉学に精進してまいります。

医学科 2年生早川 一慶さん

前列右より3人目 … 早川さん

University of Alberta Hospital Clinical Islet Laboratory へ実習留学をしました

海外における実習は大変費用が掛かり、「未来への飛躍」基金のご支援なくしては実現できなかったと思います。学生の早い段階で世界の研究室の雰囲気、医療現場に触れることができたことは大きなモチベーションとなりました。また、多くの方々に助けられ、力をいただいたからこそ海外での実習を無事に終えることができました。研究室のメンバーとの交流、初めての海外での生活、また世界中からやってきた留学生との出会いなど、全てが新鮮でかけがえの無い経験になりました。今回関わってくださった皆様への感謝の気持ちを忘れず、この経験を自分が成長するための糧としていきます。
この実習は機関によって実習内容も多種多様でそれぞれの学生がかけがえのない経験をしていると思います。現時点でやりたいことがある方はもちろん、探している途中の方も是非先輩に話を聞いて考えてみてください。与えていただいた機会に感謝し、充実した実習を送られることを願っています。

医学科 2年生山田 愛さん

University of Texas Health San Antonio へ実習留学をしました

この実習で、普段の授業では学ぶことのできない貴重な経験ができました。このような機会を与えてくださり誠にありがとうございます。
私は、将来医師として働くだけでなく、研究活動もしていきたいと考えております。留学には費用が掛かりますが、「未来への飛躍」基金のおかげでアメリカの研究室でやりたい研究に参加することができ、基本からしっかりと学ぶことができました。英語が不安ではありましたが、自分にできることを頑張れたと思います。実験がうまくいかなかったときもありましたが、研究の面白さと大変さを実感することができました。今後大学でも研究を続けていきますが、この実習で学んだことを忘れずに頑張っていきます。

医学科 2年生二川 真由さん

02 看護学科臨床研修(国際看護論Ⅱ)

看護学科4年生を対象に、異文化における看護と医療の実際を海外研修において見学し、人間の健康と病が社会的・文化的に構築されたものであることについて理解を深めることを目的とした授業です。チェンマイ大学への海外実習の際の宿泊費の一部を本基金から助成しました。

今まで持ち合わせていなかった新しい視点で、物事のとらえ方を知れた研修

タイの医療体制や問題に対するコミュニティーでの活動の様子など、実際に地域に行って見学し、直接お話を聞かせていただくことができました。私にとってこれからの看護師としての人生においてとても貴重な学びと経験になりました。この経験から感じたこと、得た学びを忘れず、今後に活かし、患者やスタッフに対して真摯に向き合い寄り添うことのできる看護師を目指したいと思います。
最後に、この研修にかかる費用を一部負担いただきありがとうございます。「未来への飛躍」基金があったことで、研修に参加することへのハードルが下がり、金銭面で悩むことなく研修を終えることができました。大きな発見から小さな気づきまで、とても良い経験となりました。

看護学科 4年生服部 由貴さん

左より2人目 … 服部さん

03 海外留学(ADVANCED CLINICAL ENGLISH Ⅱ)

健康や医療等に関する教材を用いて、reading,writing,listening and speakingを総合的に修得するための訓練を行うもので、医学科3~6年生、看護学科を対象としたニュージーランドへの海外留学です。交通費、宿泊費等の一部を本基金から助成しました。

インプットするだけでなく実践でアウトプットができる研修

私にとって、最も恵まれていたと感じたことはプログラムをサポートしてくれたインストラクターとの出会いでした。実際に救命救助をしているプロの方によって実践での活きた知識をたくさん教えていただきました。座学や手技実習の後に実際のケースを想定したシナリオ特訓も行われ、とても濃密な2週間の学びとすることができました。意思疎通の大切さ、先を予測したうえでの準備と行動、ディシジョンメイキングなど、学んだことをこれからの人生で活かしていきます。
医療知識や多様な文化の価値観を含めた多くのことを学ばせていただけたこの研修は、「未来への飛躍」基金があるからこそ成り立っている研修なのだと思います。改めて、感謝申し上げます。ありがとうございました。

医学科 3年生藤原 邑さん

前列左より3人目赤い服 … 藤原さん

チーム医療に求められるコミュニケーションスキルを学ぶことができる

この研修では、人が目の前で倒れているときや災害が起こり多くの負傷者が出た場合のトリアージなど救命に関するトレーニングコースが行われています。
「未来への飛躍」基金のおかげで金銭面での負担が軽減されたことにより研修への参加を踏み出せましたことがありますので、大変感謝しています。低学年であることや、英語が苦手という理由で参加をやめるのはもったいないので、迷われている場合はぜひ参加してみてください。私自身海外へ行くことが人生で初めての経験であり、不安もありましたが、大学や教授のサポートのおかげで安心して取り組むことができました。研修中はすべて英語で指導を受けられるため医療英語を会話や議論に用いるなど普段の英会話にはない貴重な経験を得ることができます。自身の英語力の向上を図るとともに救命について学ぶことができたため、今後の学習に活かしていきます。ありがとうございました。

看護学科 3年生伊藤 隆司さん

左より2人目 … 伊藤さん

学科と学年の枠を超えたチームで、互いに補い、伸ばし、改善し合える研修

このメンバーで参加できたことを非常に感謝しています。大学内で活躍できる学生でありたいという気持ちを抱きながら入学したこともあり、今回参加することで、英語を用いて発信できる看護師を目指したいという気持ちが一層大きくなりました。参加するためには、基本的な医学的知識は必要であると思いますが、低学年で知識不足だという理由で参加を諦めることは非常にもったいないです。ぜひ、低学年の方には英語力を磨き、それが自分の強みであるということを主張し、積極的に挑戦してほしいと思います。
また、私にとって「未来への飛躍」基金の存在があったからこそ、この貴重な経験に参加する決断を下せました。今後の看護師というキャリアに対する考えに大きな変革をもたらしたと言えます。本当にありがとうございました。

看護学科 1年生永井 清香さん

手前左 … 永井さん

04 大学院医学研究科博士課程入学者に対する奨学金

優秀な大学院博士課程修了者及び学位取得者を広く社会に、より多く輩出することを目的とした奨学金制度です。入学料及び授業料相当額を本基金から貸与しました。

私は現在、本学の病原体・感染防御医学教室に所属しながら国立感染症研究所に国内留学し、ウイルス感染症の研究をしております。
初期臨床研修修了後、大学院に進学をしたため、学費への不安が少なからずありました。しかし、本奨学金の貸与により、経済的な不安を抱えることなく研究に没頭する毎日を送ることができております。また多くの方のご指導ご鞭撻により、本年度から日本学術振興会の特別研究員にも採用されることとなりました。今後も真摯に研究に取り組んでいく所存です。そして将来的には、医師そして研究者として患者に還元可能な臨床応用を見据えた研究を行い、社会貢献していきたいと考えております。
本基金から多大なるご支援いただきありがとうございます。

病原体・感染防御医学教室三須 政康さん

大学及び附属病院の施設整備、社会とのつながりへの支援

01 クラブ活動への支援

基金ではクラブ棟の老朽化対策や環境整備に助成をしており、2019年度はクラブ棟のコンセント増設やバッティングゲージの購入、クラブ用洗濯機の買い替えなどを行いました。また、設備だけでなく「西日本医科学生総合体育大会(西医体)」への参加費の助成を行いました。学生たちは日々の努力を発揮して、陸上部の女子5,000mが優勝、男子バレーボール部が3位といった成績を残しました。
今後もクラブ活動を積極的に助成していけるよう、学生の意見を反映させながら進めてまいります。
クラブ活動は学生生活を有意義にするだけでなく、豊かな人間性や社会性を培うことに多いに役立ちます。基金ではこれからも学生のクラブ活動を応援していきます。

02 新入学生への応援支援

入学式後に行われた、医学科・看護学科の新入学生保護者を対象とした説明会・懇談会への支援を行いました。説明会・懇談会を通して本学の教育活動等に関する理解を深めていただけたことと思います。
また、懇談会の場では基金の保護者質問ブースを開設し、理事長や医学科・看護学科の同窓会の方々のご協力のもと、保護者の皆様へ基金についてご案内・ご説明させていただきました。


03 健康長寿イベントへの助成

奈良医大の教員と学生がショッピングモールで開催した、地域の方々に奈良医大を身近に感じてもらうための健康イベントへ助成を行いました。
健康長寿を目指すためのストレスチェックやロコモ・メタボの健康チェックなどに加え、子どもも楽しめるよう診察体験や救急車見学を実施し、医療に興味をもつきっかけづくりができるようなイベントが行われました。