講座紹介

微生物学の基礎医学的研究を基に、
基礎微生物学と臨床感染症学とのトランスレーショナル的な
臨床微生物学研究の発展を目指しています!

教授ご挨拶

教授奈良県立医科大学が位置する奈良県橿原市は、古都の街並みを彩る美しく緑豊かな地です。 微生物感染症学講座のスタッフはこの恵まれた環境で、日々、教育、研究に励んでいます。

微生物感染症学講座は、喜多英二名誉教授が主宰されました細菌学講座を前身とし、平成26年度、改組により名を改めたものです。微生物感染症学講座は基礎医学の講座ですので、「教育」と「研究」が二つの大きな柱となります。現在、当講座は、医師のみならず薬学系、獣医学系、臨床検査技師、看護師など多彩な職種で構成され、多角的な視点から微生物を捉え、教育、研究に取り組んでおります。

まず教育に関しましては、学部生教育におきましては、微生物を理解し、正しく取り扱えるよう教育をすすめています。微生物学は、ウイルス、細菌、真菌など多岐にわたるため、非常に幅広い知識を必要とする臨床に直結する実践的な分野です。また、分子生物学、遺伝学、免疫学など多岐にわたる分野の学問が関連し、その進歩も非常に早いため、最新情報を踏まえた教育に取り組んでいます。病原菌は人間の予想を遙かに超えて進化していますが、薬剤耐性菌もその一つです。今後も新しい耐性機序を持った未知の薬剤耐性菌が次々に出現することが予想されるため、これらを察知する力を持った他大学にはみられない優れた人材を育成していきたいと思います。大学院生に対しては、修了後も大学や病院、あるいは研究所において、生涯にわたり研究を継続していけるよう指導し、今後、我が国において指導的立場となるような人材を養成していきたいと考えています。

一方、研究では、これまで私どもは、薬剤耐性菌の耐性機序に関する研究を行ってまいりました。この研究では、昨今、マスコミを騒がせ大きな問題となっている「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)」の一種である新規β-ラクタマーゼを世界に先駆け発見し、以降、β-ラクタマーゼによる耐性菌の耐性機序解析および分子疫学を中心に研究を進めてまいりました。今後も新規β-ラクタマーゼの出現が予想されることから、その遺伝学的、酵素学的解析に取り組み、臨床現場における抗菌薬療法に役立つ情報を発信していきたいと考えています。

また、世界的に問題となっている多剤耐性アシネトバクターやESBL産生大腸菌、メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌などの分子疫学に関する研究を進め、詳細な解析を進めているところです。さらに現在、海外で広く蔓延し、今後本邦に流入してくることが懸念されるCRE(NDM-1やKPC-2産生菌など)に対し、これまでになく迅速かつ正確な検査室レベルでの新規検出法の開発を目指しています。

本学は県立大学であることから、地域への貢献も重要な課題です。奈良県立医大には全国でも数少ない感染症センターが設置されおり、感染症に特化した診療・教育・研究に取り組み、地域における感染症診療を発展させるよう特別に力をいれている大学です。当講座も奈良県立医大における耐性菌分離状況、耐性遺伝子検出状況を中心とした分子疫学解析によるモニタリングを兼ねた臨床に直結する研究を展開し、感染症診療に貢献できるよう取り組んでおります。また、県内の医療施設と共同で薬剤感受性試験成績の経年的・地域特性に関する解析を行い、奈良県立医大を中心とした地域医療施設全体への診療支援・ネットワーク構築を行っております。さらに、全国規模で耐性菌を収集し、奈良県立医科大学を日本におけるコアラボセンターとしての機能を担えるよう体勢を構築し、地域のみならず本邦における薬剤耐性菌研究のメッカとなることを目指し、研究を進めているところです。

奈良県立医科大学 微生物感染症学講座
教授 矢野寿一