奈良県立医科大学輸血部

輸血部について

教授挨拶

奈良県立医科大学輸血部 教授・部長 松本 雅則

COVID-19による混乱ももうすぐ3年になろうとしています。

奈良医大附属病院もCOVID-19患者を多数受け入れ、大きな影響を受けていますが、「奈良県民の最終ディフェンスライン」としての使命を果たすべく、他院では治療が難しいCOVID-19以外の患者さんも懸命に受け入れています。日常診療では制限が多いですが、重症の患者さんが多いためか、輸血の使用量はむしろ増えており、輸血部での取扱量も増えています。ただ、輸血用製剤は増えていますが、それ以外の血漿分画製剤の使用量はやや低下しております。

また、この3年間で輸血以外の業務も増えました。細胞治療や遺伝子治療などまだ治験段階のものが多いですが、輸血部で取り扱っています。その中で最もインパクトが大きいのは、我々のCPCで治験薬を製造したことでしょう。本学化学教室の酒井宏水教授が実施されているAMED研究で、人工赤血球の製造をCPCで行い、無事に第1相治験を終了しました。その治験薬として人工赤血球製剤(ヘモグロビンベジクル)を大学病院で作成しました。それ以外にも細胞の採取・保管や遺伝子治療に使うベクターの調整など、輸血部の仕事の広がりを実感させられます。

研究部門は、海外からの留学生や国内から参加してくれた医師も加わり、順調に進んでおります。従来からの血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の研究に加え、後天性von Willebrand症候群(AVWS)の研究も行っています。COVID-19の治療で有名になったECMOによってAVWSが発生していることを報告し、その治療法としての抗体製剤の開発もAMED研究費を獲得し継続しています。

最後に私は令和4年12月1日より本学血液内科学講座の初代教授に就任しました。輸血部の部長も兼任します。体制としては大きな変化はありませんが、2つの部門を融合させることで、人的な交流や新たな取り組みが行えるようになり、輸血部の新たな発展が望めると考えています。

引き続き、ご指導、ご支援を賜りますようにお願いいたします。

令和4年12月吉日
奈良県立医科大学輸血部
部長 松本 雅則