奈良県立医科大学輸血部

研究

血栓性微小血管症(TMA)

血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy : TMA)

TMAは、血小板減少と溶血性貧血に、腎障害や脳神経障害などの臓器障害を合併する疾患群です。TMAは全身の微小血管に血小板を中心とした血栓が形成されることで発症します。TMAに含まれる代表的な疾患として、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura : TTP)と溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome : HUS)が有名です。TTPは古典的5徴候(血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害、発熱、精神神経症状)、HUSはGasserの3徴候(血小板減少、溶血性貧血、急性腎不全)で知られていますが、これらの疾患概念が大きく変化しています。TTPと非典型[atypical (a)]HUSは、国の医療費助成の対象となる指定難病に含まれるようになりました。

表1に病因によるTMAの分類を示しますが、TTPはvon Willebrand因子(VWF)切断酵素であるADAMTS13が欠損する症例のみを指すようになりました。感染に伴うTMAとして、O157などの志賀毒素産生性大腸菌(shigatoxin-producing E. coli : STEC)によるものと、肺炎球菌感染によるものが知られています。STEC感染によるTMAは、STEC-HUSと呼ばれ、HUSの90%以上を占めます。それ以外のHUSをaHUSと呼んでいましたが、現在では補体関連のTMAをaHUSと呼ぶようになりました。それ以外の膠原病などの自己免疫疾患、造血幹細胞移植、悪性腫瘍などの基礎疾患に伴って発症する二次性TMAは、病因が明らかでなく、それぞれの基礎疾患関連のTMAと分類されています。

奈良医大輸血部では、1998年から全国の医療機関からADAMTS13測定依頼を受け付け、独自のregistryを構築してきました。その症例数は2018年末で1500例を超えており、希少疾患のregistryとしては世界有数の規模です。(図1)

 

病因によるTMAの分類と臨床診断

 

奈良医大輸血部で2018年度末までに集積したTMA症例数の推移

 

参考文献
1)松本雅則ほか:血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)診療ガイド2017. 臨床血液 58 : 271, 2017