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腎移植

はじめに

 腎臓移植は、腎不全の患者さんの機能が低下した腎臓の代わりとなる治療、腎代替療法の一つで、近年、移植医療の進歩によりその成績は向上し、一般的な治療法の一つとなっていますが、日本においては腎提供者数が少なく、未だ一般的な治療法とはなっておりません。
しかし、腎臓移植を受けることにより、水分、食生活をはじめとした種々の制限より解放され、一般健康人と同様な生活がおくれるようになり、長期の旅行等も可能となります。
奈良県においては、奈良県立医科大学附属病院が唯一の移植施設となっており、奈良県における腎移植推進に取り組んでおります。

生体腎移植と献腎移植(死体腎移植)について

 生体腎移植は、腎臓提供者(ドナー)が両親、兄弟など身内(6親等以内の血族か3親等以内の姻族)からの腎臓移植です。生体からの腎移植ですので、ドナーの2つの腎機能が同じ程度であること、さらに組織適合検査にて移植に適することを確認する事が必要となります。
献腎移植(死体腎移植)は、心停止あるいは脳死の患者さん(ドナー)からの腎臓移植です。この様なドナーより腎提供の申し出があった場合に、日本臓器移植ネットワーク(JOT)を通じて、腎移植を希望して登録している患者さんから血液型や組織適合、待期期間などにより選択されて腎移植が施行されます。従って、献腎移植を希望される方は、日本臓器移植ネットワークに献腎移植希望登録をする必要があります。

献腎移植登録のための組織適合検査

献腎移植を希望される方は、日本臓器移植ネットワークへ登録する必要があります。
奈良県においては、奈良県医務課(奈良県臓器バンク:0744-25-3883)が担当しています。登録を希望される方は、腎疾患や透析を診てもらっている先生に相談するか、奈良県臓器バンクにご相談ください。希望者は、奈良県立医科大学附属病院泌尿器科で、診察を受けた上で組織適合検査(血液検査)を受けることとなります。

腎移植手術について

 腎移植手術は、生体腎移植も献腎移植も原則的に右下腹部の骨盤腔に移植します。
手術方法は、移植する腎臓の血管と足を行き来する腸骨動静脈とを縫い合わせ(吻合)、移植する腎臓の尿管と膀胱を吻合することになります。手術時間は約6時間程度で、生体腎移植の場合は、移植直後に最初の尿排出がみられますが、献腎移植の場合は少し遅れて尿の排出がみられます。

拒絶反応について

 腎移植後、最も問題となるのが拒絶反応です。ひとには外から体内に入る異物(ウイルスなど)に対して攻撃をする自己防御反応である免疫というものが備わっていますが、この免疫の攻撃が移植した臓器に生じるのが拒絶反応です。拒絶反応には大きく分けて急性拒絶反応と慢性拒絶反応があります。
急性拒絶反応は、腎移植後約1〜2カ月の間にみられる拒絶反応で、放置すると移植した腎臓が機能しなくなります(機能廃絶)。現在では、急性拒絶反応の兆候が見られた時点で適切な治療によってほとんど改善します。
慢性拒絶反応は、退院してから数ヶ月より数年あるいは10数年後より次第に移植した腎機能が低下する拒絶反応であり、その原因は未だ解明されておりません。

免疫抑制剤について

 腎臓移植を施行後は、拒絶反応を抑えるために免疫を抑える免疫抑制剤を服用する必要があります。この免疫抑制剤は移植直後には大量に服用する必要があります。経過とともに服用量は減っていきますが、移植した腎臓が生着している限り半永久的に服用していく必要があります。
一般的には、点滴の1種類と3〜4種類の内服の免疫抑制剤を組み合わせて投与します。

移植手術後2週間から退院まで

 移植手術直後より、個室へ入ります。
この部屋は腎移植後に、強力な免疫抑制剤を服用するために、感染症の予防のための隔離の病室です。約5日間入ってもらいますが、特に感染症の兆候がない場合は、その後に一般病室へ移ってもらうことになり、さらに経過をみて、約3〜4週目で外泊練習後に退院となります。

外来通院

 退院後、最初の4週間は週に1回外来通院します。外来受診時に、血液検査を施行し、その結果で投薬量を変更したり投薬内容を変更したりすることになります。
また、移植した腎機能が低下し、拒絶反応が疑われる場合は早急に入院してもらい、治療を開始する事になります。
退院後、4週間が経過したら、外来通院は2週間に1回となり、この時期に特に異常所見がなかったら、今度は1カ月に1回の外来通院となります。
原則、1カ月に1回の診察になりますが、状態が安定している場合、診察の間隔をあけることもあります。

腎移植の成績(生存率・生着率)

 腎移植後の生命予後は一般に透析療法よりも良好で、生体腎では1年生存率が約99%、5年生存率が約97%です。献腎移植では透析期間の長い患者さんに施行することもあり、成績はやや落ちますが、1年生存率が約98%、5年生存率が93%と良好な成績が示されています。
腎移植をした後は、全ての患者さんにおいて移植した腎臓が機能するわけではありません。前述したように、急性拒絶反応あるいは慢性拒絶反応でせっかく移植した腎臓が機能しなくなる場合もあります。移植した腎臓が機能している割合を生着率といいますが、優れた免疫抑制剤の出現により、最近の生体腎移植の成績は1年生着率が約98%、5年生着率が約93%と生着率における格段の進歩が認められます。献腎移植は摘出してから移植するまでの時間が生体腎移植よりも長いことなどがあり、成績はやや落ちますが、1年生着率96%、5年生着率88%と良好な成績が示されています。

腎移植の長所・短所

 腎臓移植を受けることによって、血液透析あるいは腹膜透析のように時間的な不自由さはなくなり、食事制限は少なくなり、水分制限は必要なくなります。
また、そのために長期の旅行なども可能となり、生活の質の向上という点では優れた治療法と思われます。
しかし、現在の献腎移植においては、腎臓提供者の数が著しく少なく、献腎移植を希望して日本臓器移植ネットワークに登録されている患者さんの数を考えると、献腎移植はまだまだ一般的な治療法とは言えないのが現状であります。

腎移植に関する相談

 腎移植に関する相談ならびに問い合わせに関しては、腎移植専門医が対応させていただきます。奈良県立医科大学附属病院では、泌尿器科外来で、米田(木・金)・堀(金)が腎移植担当となっています。また腎移植をお考えの方やご家族の方には、移植コーディネーターが説明や相談を行っております。腎臓の病気を診察してもらっている先生と相談して、当院に紹介してもらってください。