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国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所知的・発達障害研究部の高橋長秀部長、奈良県立医科大学 精神医学講座の岡田俊教授、名古屋大学医学部附属病院の加藤秀一講師らの研究チームは、ADHDを有する人が、後にトゥレット症を発症するメカニズムの一端として、炎症に関わる生物学的経路が関与している可能性を明らかにしました。
ADHD(注意欠如・多動症)は子どもの約5%にみられる神経発達症であり、多動性・衝動性や不注意などが特徴的です。一方、トゥレット症は、運動チックや音声チックが1年以上持続する疾患で、しばしば難治であり、さらにADHDとの併存率が非常に高く50%に達するという報告もあります。個人差はあるものの、ADHDの症状が先行し、その後にチック症状が出現するという経過を辿るケースが多く、発症のメカニズムについては多くの不明点が残されていました。
本研究では、ADHDおよびトゥレット症の全ゲノム関連解析(GWAS)データを用いてパスウェイ解析を行い、「好中球脱顆粒(neutrophil degranulation)」という免疫反応に関与する経路がトゥレット症に特異的に関連することを見出しました。さらに、ADHDとトゥレット症を併存する患者(N=25, 平均年齢 14.2歳)では、ADHDのみを有する患者(N=43, 平均年齢 13.7歳)と比較して炎症の指標である好中球リンパ球比率(NLR)が上昇しており、NLRが将来的にトゥレット症を発症するリスクを予測する生体マーカー(バイオマーカー)となる可能性が示唆されました。
この研究成果は、日本時間2025年3月22日に、国際学術誌『Brain, Behavior, and Immunity – Health』のオンライン版に掲載されました。
雑誌名:Brain, Behavior, and Immunity - Health
論文名:The role of inflammation in the development of tic symptoms in subjects with ADHD
著者名:Nagahide Takahashi, Hidekazu Kato d, Yoshihiro Nawa d, Shiori Ogawa, Kenji J. Tsuchiya, Takashi Okada
DOI:10.1016/j.bbih.2025.100981
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