奈良県立医科大学
奈良県立医科大学 分子病理学講座Department of Molecular Pathology, Nara Prefectural Medical University

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研究紹介

前がん病変の同定

前がん病変は、がんに進展する頻度が高い病変です。前がん病変を研究することにより、がんがどのような経路で発生してくるのか、発生に関わる促進因子や抑制因子、遺伝子異常を明らかにすることが可能です。その知見は、がんのハイリスクの人を見つけ出し、がんへの進行を予防することにつながります。私たちは、胃癌の主要な発がん経路であるピロリ菌感染における前がん病変を明らかにしました(1,2)。この病変では、胃粘膜の細胞にテロメアの減少が生じており、10年間のフォローアップで57%にがんが発生しました。また、ピロリ菌と関係なく胃の過形成ポリープから発生する胃癌では稀なBRAFの遺伝子異常が高頻度に認められました(3)。大腸癌の前がん病変のひとつであるSSA/Pでは、癌への進展に、腸管常在菌であるウェルシュ菌がタイトジャンクションを障害しYAPを活性化するが重要であることを明らかにしました(4)。

前がん病変の同定
進行がんが噴門に、早期がんが前庭部に見られた(A)。癌細胞ではTVが大幅に減少し、腫瘍周囲粘膜では癌部位に近づくほど上皮TVが減少しました(B)。ヒートマップでは低TV上皮の局所的な分布が見られた(領域ⅡおよびⅢ)。Ⅱ領域では腸上皮化生が認められ、腺下部の1/3以上に核腫大が認められ、構造的異型は認められなかった。スロットブロットでもFISHと同等のTVの減少が示され(D)、サザンブロットでもテロメア短縮が癌病巣と局所的なテロメア低下領域Ⅱ・Ⅲで認められた。

文献

  1. Kuniyasu H*, Kitadai Y, Mieno H, Yasui W
    Helicobactor pylori infection is closely associated with telomere reduction in gastric mucosa
    Oncology 65(3): 275-282, 2003
  2. Fujiwara-Tani R*, Takagi T, Mori S, Kishi S, Nishiguchi Y, Sasaki T, Ikeda M, Nagai K, Bhawal UK, Ohmori H, Fujii K, Kuniyasu H*
    Short telomere lesions with dysplastic metaplasia histology may represent precancerous lesions of Helicobacter pylori-positive gastric mucosa.
    Int J Mol Sci - Gastric Cancer: Molecular Pathways and Candidate Biomarkers 4.0, 24(4): 3182, 2023
    doi: 10.3390/ijms24043182
  3. Fujiwara-Tani R, Okamoto A, Katsuragawa H, Ohmori H, Fujii K, Mori S, Kishi S, Sasaki T, Nakashima C, Kawahara I, Hojo Y, Nishiguchi Y, Mori T, Mizumoto T, Nagai K, Luo Y*, Kuniyasu H*
    BRAF mutation is associated with hyperplastic polyp-associated gastric cancer.
    Int J Mol Sci - Gastrointestinal Cancers: Molecular Pathophysiology, Novel Biomarkers and Therapeutic Approaches 22:12724, 2021.
    doi.10.3390/ijms222312724
  4. Fujiwara-Tani R, Fujii K, Mori S, Kishi S, Sasaki T, Ohmori H, Nakashima C, Kawahara I, NishiguchiY, Mori T, Sho M, Kondoh M, Luo Y, Kuniyasu H*
    Role of Clostridium perfringens enterotoxin on YAP activation in colonic sessile serrated adenoma/polyp with dysplasia
    Int J Mol Sci, Molecular Biomarkers in Colorectal Adenocarcinoma. 21(11):E3840, 2020.
    doi: 10.3390/ijms21113840

その他の研究トピックス

病理検体を用いた研究

研究課題名:病理解剖標本を用いた癌関連心筋障害の組織学的検討
研究期間 :実施許可日から2027年3月31日
 

奈良医大附属病院を受診された皆様へ

研究課題名:抗Claudin-5 抗体を用いた、病理解剖病理組織・凍結検体および血清・脊髄液試料におけるClaudin-5 発現解析
研究期間 :実施許可日から2027年3月31日

野崎徳洲会病院を受診された皆様へ
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