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教室の歩み

 奈良県立医科大学泌尿器科学教室の歴史は石川昌義初代教授(後に奈良県立医科大学長)が着任された1946年(昭和21年)に始まりますが、当時まだ奈良県立医学専門学校であった本学の皮膚科泌尿器科学教室として産声をあげました。1948年に奈良県立医科大学に昇格し、1963年には皮膚科学教室と泌尿器科学教室は完全に分離独立しました。1966年には、当時ドイツ留学から帰国された岡島英五郎先生がグラスファイバ−尿道膀胱鏡を本邦に初めて導入され、その後、膀胱腫瘍や前立腺肥大症に対する泌尿器内視鏡学(Endourology)の礎が築かれました。1970年には人工腎室が開設され、腎不全治療のための血液透析療法が県下で初めて施行され、現在の附属病院透析部へと発展しました。泌尿器科学教室は奈良県の透析医療の中心的な役割を担いつつ、今日まで多くの透析療法に精通した泌尿器科医を輩出しました。1974年には本学において最初の腎移植術が施行され、奈良県の腎移植医療の中心施設として現在も発展しています。1975年には岡島英五郎先生が2代目教授(後に奈良県立医科大学長)に就任され、石川昌義教授の時代から教室の主要テーマであった実験的膀胱癌の基礎研究が継承され、現在まで多くの泌尿器癌の臨床および基礎研究に取り組んできました。尿路結石治療の領域では、西日本で最も早い1984年に経皮的腎砕石術(PNL)などの内視鏡手術を導入し、1987年には体外衝撃波砕石装置(ESWL)を設置しました。1993年には腹腔鏡下副腎摘除術を導入し、以来、Endourologyの発展と普及にも取り組んできました。また、同じ頃よりマイクロ波組織凝固装置を用いた腎部分切除術の新しい手術手技を開発し、小さな腎細胞癌に対する無阻血患側腎温存手術にも早期から積極的に取り組み、その有用性を確認し、QOLに配慮した低侵襲な手術として確立させました。

 泌尿器癌の研究領域では膀胱癌の基礎研究を中心に発展させ、動物を用いた実験的発癌病理研究から分子生物学研究まで膀胱癌の自然史の解明に取り組み、泌尿器腫瘍学を教室の伝統として育んできました。また臨床研究の面では、1980年台初頭から教室の関連施設と共同して奈良泌尿器腫瘍研究グループ(NUORG)を組織し、膀胱癌をはじめとする泌尿器癌に対する標準的な薬物療法の確立のために多施設共同臨床研究を実施し、多くの成果を生み出しました。また、国内有数の二分脊椎・神経因性膀胱の専門施設である星ヶ丘厚生年金病院(大阪府枚方市)との連携で、排尿障害の臨床や基礎研究に多くの実績を残してきたことは教室が誇る伝統のひとつでもあります。

 戦後の高度経済成長や高齢化社会の到来にともない、各地で泌尿器科が開設され、当教室の関連施設も増加の一途を辿りました。1980年代後半からは入局者も増加し、奈良、大阪、三重県下に関連病院28施設と同門会員130名、医局員90名を抱える大きな教室に発展しました。1996年には平尾佳彦先生が3代目教授に就任され、自由闊達な雰囲気と質実剛健を柱に今も教室が運営されています。2003年には泌尿器癌や排尿障害の診療および研究で多くの業績を作られた大園誠一郎先生が浜松医科大学教授に就任され、翌年2004年には腎細胞癌の分子生物学研究およびワクチン療法の開発を手がけられた植村天受先生が近畿大学医学部教授に就任されました。2004年には、近畿では最も早く前立腺癌に対する密封小線源療法(ブラキセラピー)を導入し、強度変調放射線治療(IMRT)の導入と相まって限局性前立腺癌に対する放射線治療がこの間に充実されました。2005年に膀胱癌診療におきましては、内視鏡診断に蛍光膀胱鏡を用いた光力学的診断システムを導入し、表在性膀胱癌の診断領域に新たなコンセプトを投入しました。また同年より、けいはんな知的クラスター産学官連携事業の研究助成と他学の協力を得て、医療専用LSIを用いた無拘束テレメトリ排尿機能検査のシステム作りにも挑戦しています。医工連携を基軸に教室の研究は新たな発展をみせ、尿細胞診の光力学診断技術と遺伝子診断をマッチさせた診断システムの開発を経済産業省の研究助成を受け推進しています。また、排尿機能障害の領域におきましては、高齢者の日常生活の質を大きく低下させる前立腺肥大症、夜間頻尿、過活動膀胱など排尿障害の臨床研究に精力的に取り組み、多くの成果を報告し教室の臨床研究の大きな柱になっています。一方、腎不全・透析医療につきましては、透析部の吉田克法病院教授が中心となって整備と充実を行ってまいりました。腎移植につきましても、最近では年間20例前後の症例に実施しており、2012年9月時点で179例の実績があります。小児泌尿器領域では、腹腔鏡手術や尿路形成術を積極的に施行し、奈良県下の小児泌尿器科診療の基幹病院として発展しています。

 2012年8月には藤本清秀が4代目教授に就任いたしました。現在も、同門会、教室関連施設ならびに学内外の多くの領域から様々な支援を頂戴しながら、奈良県立医科大学泌尿器科学教室は活気に満ち溢れた教室・医局として、日々、診療・教育・研究に取り組んでいます。さらに、今後もこれまで培ってきた教室の伝統を継承し、さらに新しい領域の診療と研究に取り組んで行きます(平成24年9月吉日 藤本清秀)。

(平成24年9月吉日 藤本清秀)