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前立腺肥大症

前立腺肥大症とは?

前立腺は男性の膀胱の出口を取り巻くように存在し、その中心に尿道が通っています。前立腺は加齢により内腺と呼ばれる内側部分が肥大して大きくなり、その結果膀胱の出口で尿道が圧迫されるために、排尿状態が悪くなる疾患です。前立腺肥大症の患者さんは、50歳代では2%、60歳代では9%、70歳代では12%程度と報告されています。

前立腺肥大症の検査は?

排尿症状の問診

前立腺肥大症では排尿に関する様々な症状があり、排尿症状(尿の出る勢いや出方)と蓄尿症状(尿意の抑制や排尿回数)を国際前立腺症状スコアー(IPSS)やQOLスコアーを用いて、診断治療の評価に用います。また、頻尿や切迫性尿失禁を認める患者さんには、過活動膀胱症状スコアー(OABSS)をチェックします。

手術療法

直腸診:肛門から挿入した指先で、直腸壁を隔てた前立腺を診察します。前立腺肥大症の場合、全体が大きく腫れていますが、硬いしこりをふれる場合は前立腺がんを疑います。

超音波断層法(エコー):腹部からエコープローベで、あるいは肛門から挿入したエコープローベで前立腺の大きさや内部の異常の有無を調べます。

尿流量測定:尿排出の勢いや排尿量、あるいは残尿量を調べる検査です。正常な人では、尿の勢いはよくグラフに表すと山形になりますが、前立腺肥大症の人は尿が少しずつしか出ないため、グラフはなだらかな山型や多数の小さな山が集まった形にとなります。また、膀胱平滑筋や尿道括約筋の機能も評価するため、膀胱の内圧測定と呼ばれる検査も行います。

血液検査:前立腺がんの腫瘍マーカーである血液中の前立腺特異抗原(PSA)を調べます。前立腺がんの場合はPSA値が高くなり、前立腺がんの有無を調べるのに役立ちます。PSA値が高い場合は、針生検と呼ばれる前立腺の組織検査が必要となります。

前立腺肥大症の治療は?

薬物療法

  • α-1ブロッカー(交感神経のα-1受容体遮断作用)
    前立腺や膀胱の出口の平滑筋の緊張を緩め、尿を出やすくします。血圧低下を起こすことがあります。
  • 抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)
    男性ホルモンの作用を抑えて、肥大した前立腺腺腫の体積を小さくします。副作用として、男性機能が低下することがあります。
  • 抗コリン薬(副交感神経のムスカリン受容体遮断作用)
    頻尿や尿意切迫に対する治療薬ですが、膀胱の平滑筋が抑制されるため、少し尿が出にくくなったり、口渇や便秘が副作用でみられます。また、緑内障の患者さんのなかには、投与に注意が必要な場合があります。

前立腺の検査

直腸診:肛門から挿入した指先で、直腸壁を隔てた前立腺を診察します。前立腺肥大症の場合、全体が大きく腫れていますが、硬いしこりをふれる場合は前立腺がんを疑います。

極度の前立腺肥大症では開腹手術で前立腺摘除が行われることもありますが、ほとんどの患者さんは内視鏡による手術で治療されます。尿道から内視鏡を挿入して前立腺の肥大した腺腫を電気メスで切除する手術(TUR-P)と呼ばれます)が、最も頻繁に行われている手術です。また、当施設では、前立腺腺腫を内視鏡的に核出する手術(TUEB)を導入していますが、TUR-Pに比べて、術中術後の出血が少なく、合併症が起こりにくいことが利点です。また、レーザーを用いた手術では、内視鏡の先端からレーザーを照射することで組織を焼灼(PVP)したり、レーザーで腺腫を切り取り(HoLEP)、肥大した腺腫を除去します。前立腺肥大症は良性疾患ですから、誰もが手術をしなければならないわけではありません。しかし次のような場合は手術の適応になります。いたずらに薬物治療を継続するより、1回の治療で長期間効果が継続できるため、手術適応がある患者さんには、薬物治療より手術をお勧めします。薬物療法による治療効果が乏しい、残尿がある(特に、尿閉を起こすような場合)、尿路感染症を繰り返す場合、腎臓の機能が低下している場合、あるいは尿路結石は発症する場合などが手術の適応となります。

日常生活で注意することは?

  • 排尿を過剰に我慢しない(膀胱の過進展は排尿困難を起こします)。
  • 便秘に注意する(排便と排尿は機能的に関連します)。
  • 適度な運動をする(骨盤内の鬱血を起こさないようにします)。
  • アルコールを控える(浮腫や炎症の助長が排尿症状を悪化させます)。
  • 薬を飲む時は医師に相談しましょう(薬剤により排尿困難を起こす薬があります)。
  • 風邪薬などに症状を悪化させる成分が含まれている場合があります。
    (突然、排尿ができなくなります)。