ここから本文です。

更新日：2025年6月20日

学歌

公立大学法人奈良県立医科大学の学歌について紹介いたします。

80周年と新キャンパスオープンを契機に、大学の理念を象徴する学歌を正式に制定する運びとなり、記念事業実行委員会のもと「学歌部会」を設置し制作を進めてまいりました。作詞は、大学の理念を深く理解する立場として細井裕司理事長・学長に、作曲は、NHK大河ドラマ『どうする家康』の音楽も担当されたピアニストで作曲家の稲本響さんにご担当いただきました。

学歌－奈良から世界へ－

公式音源

令和7年4月13日（日）に奈良県橿原文化会館で《1000人の大合唱レコーディング》～奈良から響け、未来への歌～を開催しました。当日、参加された皆様の歌声を録音した音源と映像です。

公式音源（歌詞版）

作曲者からのメッセージ

この学歌に込めた一番のコンセプトは「ストーリー」です。1945年4月という戦火の真っ只中に設立された奈良医大の歴史からして、我々には想像も及ばない様々な困難の中での出発だったはずです。その歴史を次の世代へと忘れずに繋いでいきたいという思いを、病院関係者の方々とお会いして強く感じました。歌詞に込められた壮大な世界観を、音楽によって繰り広げる歴史絵巻物のような、ストーリー性のある楽曲構成に仕上げました。
レコーディングで使用したピアノは、同じく戦時中に製作されたニューヨーク・スタインウェイです。当時、戦場の最前線に音楽を届けたいという思いから作られたこのピアノですが、戦火を逃れ現代までその力強い音色を残してくれている逸品です。
奈良医大の歴史と同じ時代を歩んだ象徴として、このピアノを選びました。同校の「歴史の軌跡」として沢山の方々のお心に届けば幸いです。

プロフィール

稲本響

ピアニスト・作曲家
1977年大阪府・堺市生まれ。3歳でピアノを始め、5歳でステージデビュー。18歳でドイツへ留学し、ピアニストの巨匠：アルフレッド・コルトーの奏法を身につけ独自の改良を加える。本人仕様の特注ピアノ「STEINWAY&SONS（NEW YORK）」を全国の各コンサート会場やレコーディングスタジオに毎回持ち運ぶという、世界でも稀なスタイルを持つ。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のトップメンバーとも共演。
映画・ドラマ・舞台・CMなどの作曲・音楽監督も務め、その作品は国内外において数々の賞を獲得している。主な作品は、映画「長い散歩」「グラスホッパー」、ドラマ「私という運命について」、舞台「海の上のピアニスト」「君と見る千の夢」、新国立劇場「わが町」、NHK「眩〜北斎の娘〜」「平成細雪」「ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜」「ノースライト」など。本人発明のピアノ音色変換装置「ピアノミュート」は特許取得済（特許第4572092号）
DMG森精機との共同プロジェクトとしてデジタルコンテンツや製品に使用する音響デザインとオリジナル音楽の制作等も行っている。 2023年大河ドラマ「どうする家康」の音楽を担当。

使用ピアノについて

太平洋戦争中、ピアノは贅沢品とされ、米国でも製造することが禁止されていた。スタインウェイ社はその技術を生かし、ピアノではなくグライダーのボディや兵士を弔う棺桶を作っていた。そんな中、米軍が特別に約3000台のピアノをスタインウェイに発注して作らせ前線に送った。これは戦地の兵士に音楽を届けようという発想からだが、戦場に容易に運べるように軽量・コンパクト化されており、また飛行機からパラシュートで投下出来るよう頑丈な箱に調律道具や楽譜と共に梱包された。色も米国陸軍軍服色いわゆるカーキだった。これが『ヴィクトリーGIスタインウェイ』である。
そのうち2436台は戦場へ行って帰る事は無かったが残りの500台余りは戦地に行くことなく終戦を迎え、沖縄や米軍関係の施設に置かれていた。おそらく沖縄にあったと思われる１台が、のちに横田基地に送られ、流れ流れて稲本のピアノプロデューサー高木裕の元へ。一度は普通のアップライトピアノのように黒く塗られ、手を加えられてしまったこのピアノだが彼の手によって、当時の音色と面影を再び取り戻した。

ピアノ提供：タカギクラヴィア株式会社

GIスタインウェイ_1

GIスタインウェイ_2

GIsteinway_trim

作詞者からのメッセージ

奈良県立医科大学の開学80周年に際し、この学歌を作詞いたしました。本学の歴史と伝統を受け継ぎながら、未来へと向かって挑戦を続ける医療人・研究者の姿を讃えるものです。

第1番では、「挑戦の精神ここに集まり」という言葉を通じ、本学の学生や教職員が志を一つにし、新たな時代を切り開く決意を表しました。医学と科学の枠を超えた探究心を持ちアントレプレナー（起業家）精神を大切にすることで、奈良から世界へと羽ばたくことを願っています。千年の歴史を持つ奈良の地に根差しながら、若き医療人がイノベーションを推進し、未来を創造する力を信じて発展していく姿を描きました。

第2番では、本学が位置する奈良の象徴として、大和三山を背に、藤原京の歴史を踏まえながら、未踏の道を切り拓く覚悟を込めました。「挑戦の旗を挑戦の意志で今も掲げん」とあるように、医学の理想を掲げ、進化し続けることを求めています。
奈良の空は清らかに広がり、古都の風が吹く中で、医療の発展に貢献し続ける誇りを胸に世界に立つ本学の姿を表現しました。

この学歌が、本学に関係するすべての人々にとって、誇りと励みとなることを願っています。