研究 研究

研究グループ紹介

奈良県立医科大学精神科では基礎研究から臨床研究、専門外来まで幅広く、各専門グループに分かれて臨床と研究を行っています。

電気生理学・分子行動学グループ

当グループでは、マウスやヒトのサンプルを用いた基礎研究およびトランスレーショナル研究を行っています。

電気生理学チームは、ホールセルパッチクランプ法という手法を用いて、スライス化された脳内の生きた神経細胞の電気的活動を記録しています。主にマウスを対象としていますが、ヒトの脳からの記録も行っています。近年は、社会的隔離モデルなど、疾患モデルマウスの前頭前野の機能異常を解明する研究を行っています。また脳神経外科・小児科と共同研究を行っており、ヒトの脳組織を用いたてんかんの発生機序の解明を目指す研究も行っています。


分子行動学チームは、動物モデル研究としては社会隔離モデルマウスと摂食障害モデルマウスの解析を行い、トランスレーショナル研究としては、同モデルマウスの知見にもとづき、自閉スペクトラム症の前頭前野構造・機能解析および摂食障害の腸内細菌叢研究を精力的に進めています。自閉スペクトラム症や摂食障害では炎症反応が亢進し、腸内細菌叢が異常な組成となっていることが報告されているため、これらを丁寧に観察しています。


また、ピッツバーグ大学精神医学部門と共同で統合失調症患者の死後脳を使った分子病理学的研究や、慶應義塾大学医学部生理学教室(岡野研)と共同研究で一卵性双生児の統合失調症患者さんの皮膚から作製したiPS細胞由来ニューロンの機能を分子生物学的・電気生理学的に解析しています。健常者から作製したiPS細胞由来ニューロンと自閉スペクトラム症患者さんの血液から作製したマクロファージを共培養し、自閉スペクトラム症患者さんの脳で観察されるシナプス変化が、マクロファージの異常のみで観察されるのかなども調べています。

認知症・画像研究グループ

当科は奈良県認知症疾患医療センターの基幹型指定医療機関として、認知症疾患の早期発見・治療や鑑別診断を行っています。認知症疾患センター外来では、頭部MRIや脳血流シンチやDaTSCANなどのSPECT、神経心理検査、介護負担度の評価などによる多面的な評価を行い、より正確な認知症の診断や個々の患者の問題点の評価、治療や適切な社会サービスの導入へと結びつけています。

画像研究では精神疾患と認知症の脳画像解析を行っています。

精神疾患
当グループでは自閉スペクトラム症や統合失調症などの精神疾患について、他グループと協力して動物モデルからヒトを繋げるトレンスレーショナルリサーチを行っています。分子生物学や電気生理など基礎実験より得られた知見と、ヒトにおける脳構造や機能、臨床症状との関わりについて、MRIを用いて脳を構造的(T1強調画像および拡散強調画像)、機能的(安静時脳画像)に評価することや、MRSにより脳代謝物濃度を評価することにより、精神疾患の病態基盤の解明を目指しています。また、統合失調症や自閉スペクトラム症患者に対する認知リハビリテーションが行われており、それらの効果の生物学的指標の評価を行っています。


認知症
認知症では物忘れなどの中核症状とともに、うつや妄想といった様々な行動心理症状を呈します。これらは単一の原因ではなく、認知機能低下、介護環境など患者を取り巻く環境が複雑に交わることにより症状化することが知られます。当グループでは認知症疾患医療センターで得られた知見やデータをもとに、MRIやSPECT、神経心理検査を用いてAlzheimer病やLewy小体病などの認知症疾患を中心に、主に行動心理症状の発現の病態基盤を解明する研究を行っています。

児童思春期グループ

奈良県立医科大学は、子どものこころ専門医を含む多数の児童精神科医が在籍し、児童精神医学の臨床・研究、人材育成の拠点となっています。多職種協働や地域連携のもと、専門外来での診療を行っているほか、児童精神科医の育成に携わっています。関連病院に勤務する医師や心理士なども含めたグループメンバーが集まり、毎月事例検討などの勉強会を行っています。研究においては,認知科学や神経心理学、事象関連電位などの精神生理学、脳画像、近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いた研究を行い,神経発達症のバイオマーカーの開発に取り組んでいます。また,注意欠如多動症に対するペアレントトレーニングやソーシャルスキルトレーニングに関する報告などを行うほか、自閉スペクトラム症モデル動物などを用いた基礎研究も行っています。

社会精神医学グループ

社会生活では生涯を通じてどのライフステージにおいても様々な問題が存在します。これらの問題は患者のみならずその家族の生活に及ぼす影響も大きく、社会経済的なインパクトも甚大です。しかもそのほとんどが医療者だけでは解決が困難な問題であり、様々な専門職、地域社会の緊密な連携が求められています。精神疾患を有する当事者が、安心して共生できる社会の実現をめざし各専門職が連携することにより、社会の成長と成熟を促していくことが大切です。社会精神医学はまさにこのような役割を果たすべく重要な分野であると考えています。

これらの役割を踏まえて、以下のような臨床研究に取り組んでいます。

  • 国立精神・神経医療研究センターが中心の「精神疾患レジストリの構築・統合により新たな診断・治療法を開発するための研究」に加わり、精神疾患の病態を明らかにし、新たな診断法や治療法の開発につなげるための患者レジストリ(診断、治療内容、治療経過などを管理するデータベース)の構築に参加しています。

リハビリテーショングループ

当研究グループは多職種(医師、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士)で構成されているのが特徴で、多面的に日常生活のしづらさを評価し、リカバリーを支援することを目標としています。

デイケア

  1. 主に統合失調症患者や高機能自閉スペクトラム症者を対象としたSST、作業療法、運動療法、心理教育、レクリエーション
  2. 気分障害患者を対象としたSST、CBT、グループワーク
  3. 統合失調症患者を抱える家族を対象とした家族会

入院病棟

  1. 気分障害や統合失調症、アルコール依存症、摂食障害患者あるいはその家族を対象とした心理教育
  2. 疾患を問わず入院患者を対象としたSST、作業療法、運動療法

現在、研究として取り組んでいるのは以下の課題です。

  • 統合失調症者と高機能自閉スペクトラム症者に対する仮想エージェントによるソーシャルスキル・トレーニングの効果検証
TOPへ