臨床

手術麻酔

中央手術部では15室(うち1室はハイブリッド手術室)の手術室を運用しており、心臓血管外科、呼吸器外科、脳神経外科、小児外科、消化器外科、整形外科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻科、形成外科、眼科、口腔外科、救急科、放射線科など多彩な手術における全身麻酔および区域麻酔による周術期管理を担当しています。それに加えてIVRセンターでの全身麻酔や小児の鎮静、産科病棟での帝王切開の麻酔や無痛分娩の管理を担当しています。

2022年度の麻酔科管理手術症例数は5,247例でした(6歳未満の小児233例、帝王切開282例、心臓血管外科298例(うち低侵襲心臓大血管手術166例)、胸部外科245例、脳神経外科397例)。高度救命救急センターや総合周産期母子医療センターを併設しているため重症例や緊急症例も豊富です。夜間の当直は麻酔科医3名体制(責任当直、麻酔当直、ICU当直)に加えて、初期研修医1名および麻酔科CE(臨床工学技士)1名で担当し、長時間手術や予定手術の延長症例、複数の緊急手術にも安全に対応できる体制をとっています。無痛分娩についても患者さんの希望によって積極的に行なっております。日中だけでなく夜間休日であっても重症緊急手術が重なっていない限り、硬膜外カテーテル留置による無痛分娩に対応しています。

毎朝7時45分からの集中治療部におけるカンファレンスのあと、8時10分から当日の予定麻酔症例に関するカンファレンスがあり、手術室麻酔責任者(ライター)を中心に各患者さんについての情報共有と麻酔計画の検討を、Teamsを用いたハイブリッドで行っています。その後、患者さんが手術室入室されるまでの時間を利用して、月曜日は初期研修医による発表(Resident Tips)、水曜および金曜はスタッフによる抄読会(6 minutes science)を持ち回りで開催しています。各学会前には、火曜および木曜に学会発表の予行を行っています。

毎月第1火曜日の17時30分からの医局会において、問題症例の検討やM&Mカンファレンス、スタッフ会議などを実施しています。後期研修医を対象とした院内勉強会(講義又はPBLD)は月2回実施しています。また、外部講師をお招きした奈良麻酔集中治療セミナーを開催し、最新の知識を習得できるように配慮しています。

当院では手術患者さんの術前術後管理を適切に実施できる体制を構築しています。各科の外来で手術が決定した段階で周術期管理センターを受診して頂き、麻酔科医、歯科医、歯科衛生士、看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、管理栄養士、臨床心理士、ソーシャルワーカー、事務から構成されるチームで管理していきます。麻酔科は麻酔科管理となる手術患者さんを対象に、術前評価および麻酔方法やリスク、発生しうる合併症についてのインフォームドコンセントを麻酔専門医1−2名、初期・後期研修医1−2名の体制で行っています。術後の患者さんも周術期管理センターを再診して頂き、麻酔関連合併症の有無や麻酔満足度を評価し対応しています。

その他の業務として、術後に患者調節型鎮痛法(patient-controlled analgesia: PCA)をつけて帰室された患者さんには、朝のカンファレンス終了後に看護師・薬剤師・臨床工学技士とともに構成された術後疼痛管理チームで回診(POCS: postoperative care service)を行って、患者さんの疼痛コントロールの状態や副作用などを評価し管理しています。また、安全な術後管理を行うために当院ではマシモ社製Safety net systemを導入し、特にPCAによる疼痛管理を行っている患者さんには呼吸モニターを装着して呼吸状態を監視しています。看護師の携帯端末にアラームが鳴るとともに、集中治療部に設置している中央監視室でも患者情報が表示されています。

手術室内におけるチーム医療として、周麻酔期看護師が5名(うち研修中2名)在籍しており、麻酔科医とともに麻酔管理や術前術後のケアを行なっています。さらに麻酔管理の補助にあたる麻酔科CE(臨床工学技士)が14名配属されており、麻酔の準備や機器の整備、麻酔補助などを担当しています。また日勤中は薬剤師も常駐しており、薬剤の在庫管理のみならず手術室での薬剤払い出し業務、術後鎮痛のPCAポンプの無菌的な充填などを担当しています。 術後神経合併症予防の為の神経モニタリングも積極的に実施しており、外科医、麻酔科医、臨床検査技師、臨床工学技士との良好なチーム医療のもと、精度の高いモニタリングの実施を目指しています。さらに麻酔科担当クラーク2名も配備されているため、麻酔科医は事務的作業の負担なく麻酔業務に専念することが可能です。安全で質の高い周術期を提供できるよう、今後も職員全員で取り組んでいきたいと考えています。